“お知らせ文”の落とし穴:UX視点で見る「伝え方」のデザイン

ユーザーに“伝える”つもりが、届いていない?

おつかれさまです、小川です。
リリース情報、メンテナンス告知、機能変更の案内。
Webディレクターが日々扱う「お知らせ文」は、地味だけれど非常に重要なタッチポイントです。

ただ、よくあるのが——

「お知らせは出しているのに、問い合わせが減らない」
「読まれていないみたいで、結局サポートが混乱する」

というケース。
つまり、“情報は出したのに伝わっていない”状態です。

その原因は「文言が足りない」「言い回しが難しい」ではなく、
“お知らせを読むユーザーの体験”を設計していないことにあります。

「読まれる前提」で書いていないか?

まず最初に見直したいのが、「お知らせをユーザーがちゃんと読む」という前提。

たとえば、次のようなメッセージを見たことがある人も多いでしょう。

※システムメンテナンスのお知らせ
2025年3月25日(火)1:00〜5:00にメンテナンスを実施します。
該当時間帯は一部機能がご利用いただけません。

形式としては間違っていません。
でもUX的に見ると、ユーザーがこの文を読む前にすでに困っている可能性が高いのです。

なぜなら、「メンテナンス中にアクセスしてエラー画面を見てから、お知らせを見る」ことが多いから。
つまり、このお知らせ文が“読まれるタイミング”を想定していないんです。

UX設計では、「読む順番」も「気づくタイミング」も含めて設計します。
たとえば次のように考えると、体験が一気に変わります。

  • メンテナンス前に通知できる?(メール・アプリ内ポップアップなど)
  • アクセス時に気づくようにできる?(エラーページで簡潔な表示)
  • 文言は「制限」ではなく「予告」に言い換えられる?

お知らせ文も、立派なUIの一部です。

“誰のため”のお知らせかを見失わない

Webディレクターが書くお知らせ文は、実は2つのユーザーに向けられています。

  1. 実際のサービス利用者(エンドユーザー)
  2. 社内メンバー・クライアント担当者(レビュー・承認者)

この2者の視点が混ざると、よくこうなります。

「担当部署の都合により〜」「仕様変更に伴い〜」「一部の環境にて〜」

どれも正しい説明ですが、読み手にとっては「で、私はどうなるの?」が見えません。
つまり、発信側の事情を中心に書いてしまっているのです。

UX視点でのリライト例を挙げましょう。


Before

システム仕様変更に伴い、一部の機能がご利用いただけなくなります。

After

ご利用中の「お気に入り登録」機能は、4月1日以降一時的にご利用いただけません。
再開は4月10日を予定しています。


ポイントは、“ユーザーが知りたい順”に並べること。
理由よりも影響と対応時期を先に伝えると、ストレスを減らせます。

「読まれない」を前提にした情報設計

すこし極端に聞こえるかもしれませんが、
私は「お知らせ文は読まれない前提」で設計する方が正しいと思っています。

なぜなら、多くのユーザーは本文までスクロールしないからです。
特にスマホでは、“1画面で完結する情報”しか認識されません。

そのために意識したいのが、情報の三段構造

レベル内容目的
① タイトル一言で「何が起きるか」一目で把握させる
② リード文「いつ・誰に・どんな影響」概要理解を促す
③ 本文詳細・補足・背景説明信頼感と対応支援

この構造を意識するだけで、「読む人」も「読まない人」も拾えるお知らせになります。

たとえば次のような違いです。


Before

システムメンテナンスのお知らせ(3月25日実施)

After

【3/25 1:00〜5:00】システムメンテナンスによりログイン不可となります
ご利用の皆さまにはご不便をおかけいたしますが、ご了承ください。


「何が」「いつ」「どの範囲で」が1行で伝わる。
これが、“読まれないUX”を見越した最小限の誠実さです。

トーン&マナーは“企業の声”そのもの

UI文言やお知らせ文のトーンは、企業の人格そのものを映します。

たとえば、同じ「エラーが起きました」でも、
どう表現するかで印象はまったく違います。

表現印象
「システムエラーが発生しました」無機質・冷たい
「ただいま接続が混み合っています」柔らかく、安心感がある
「ご不便をおかけして申し訳ありません」誠実で人の温度を感じる

お知らせ文でも同じです。
“企業がユーザーに話しかける声”として、一貫性を持たせましょう。

特に複数部署で文言を作る場合、
「お知らせ文トーンガイド」を設けるのがおすすめです。

  • 敬語のレベル(〜です/〜いたします)
  • 絵文字・顔文字の使用有無
  • 謝罪文の書き方ルール
  • 固有名詞・略称の統一

こうしたルールを一度作っておくと、レビューや承認もスムーズになります。

ディレクターが担う“最後のUX調整”

最終的に、お知らせ文の品質を決めるのはディレクターです。

文言そのものをライターが書いても、
「どのタイミングで表示するか」「どんな導線に置くか」を決めるのはディレクターの仕事。

たとえば——

  • 「トップバナー」だけでなく「機能ページの上部」にも出す
  • 「お知らせ一覧」ではなく「利用中の画面」に出す
  • 「通知センター」に登録して再表示できるようにする

といった調整で、“お知らせをUXの一部”に昇格させられます。

お知らせ文は地味ですが、信頼を積み重ねる場所です。
「伝える」は「つなぐ」。
そこにUX視点を持ち込むのが、ディレクターの腕の見せどころです。

お知らせ文を「UXメッセージ」として再定義する

お知らせ文はただの情報ではなく、
ユーザーとの約束でもあります。

  • “読む順番”までデザインする
  • “発信側の事情”ではなく“受け手の体験”を中心に置く
  • “読まれないUX”を前提に設計する
  • “企業の声”として一貫したトーンを守る

これらを意識するだけで、問い合わせ数も、ユーザーの安心感も変わります。

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投稿者

小川 紗英
小川 紗英
UIデザイナーからUXライターへ転身。SaaS開発チームでの経験を活かし、「デザインと言葉の橋渡し役」として活動中。UI文言やオンボーディング設計、エンプティステートなど、プロダクト体験を支える言葉づくりを得意とする。