次の世代のために、私たちは何を残せるか

“頑張り方”を受け継がせない チームを疲弊させないマネジメントの継承

プロジェクトが続くほど、チームには“習慣”が積み上がっていきます。
その中には、今のメンバーに合っているものもあれば、
誰のせいでもないのに、負荷だけが大きくなってしまったものもあります。

たとえば、
「緊急のときは誰かが踏ん張れば何とかなる」
「困ったらディレクターが全部受け止めることになっている」
といった“暗黙の段取り”が残っている現場は少なくありません。

こうしたやり方が長く続くと、
「頑張れる人」だけに負担が集中し、チーム全体が少しずつ疲れていきます。

次の世代に同じ負担を渡さないためには、
“頑張り方”ではなく、“整え方”を継承していく必要があります。
今回は、その視点からマネジメントを整理してみます。

「昔のやり方」をそのまま渡すと、疲労だけが増幅される

進行管理をしていると、前任のやり方をそのまま引き継ぐケースに多く出会います。

  • 「この確認フローはずっとこうだから」
  • 「ここはディレクターが細かく見てあげる文化だから」

もちろん、背景には当時なりの理由があったはずです。
ただ、案件の規模や関係者数、ツール環境が変わっているのに、
やり方だけが変わらず残ってしまうことがあります。

私が引き継いだある現場では、

  • ディレクターが全画面チェックを一人で担ぐ
  • 修正の一次判断もすべてディレクターが吸収する

というルールが“当然の前提”になっていました。

結果として、ディレクターだけが常に時間に追われ、
他のメンバーは「大変そうだけれど、どこまで手を出していいかわからない」という状態に。

そのとき強く感じたのは、
守るべきなのは“昔の手順”ではなく、“今のチームが健全に機能する状態”だということでした。

無理を「吸収する人」をつくらない

忙しい現場には、たいてい「最後はあの人が何とかしてくれる」という存在がいます。
その人の存在は頼もしい一方で、
その人の頑張りに頼り続けると、やがてマネジメントそのものが歪み始めます。

私は、そうした状態を避けるために、
「人」ではなく「仕組み」で支えることを意識しています。

具体的には、次のような工夫です。

1. 判断を分散させる

  • 最初のチェックは担当者が行う
  • ディレクターは「最終確認」と「優先順位の調整」に集中する

こう決めてから、
「とりあえず全部ディレクターに聞く」という流れが少しずつ減っていきました。

2. 負荷を可視化する

スプレッドシートやタスク管理ツールに、簡単な稼働指標を入れます。

  • 🌕:かなり忙しい
  • 🌓:通常
  • 🌑:余裕あり

のように、ざっくりした記号でも構いません。
“見た目”で偏りがわかるだけで、タスクの振り分け方は変わります。

3. 相談の導線を用意する

「迷ったらここに書いてください」と、
相談用のスレッドやコメント欄を決めておきます。

「誰に言えばいいかわからない」状態をなくすだけで、
小さな不安が大きなトラブルに育つのを防げます。

“頑張る”より“余白をつくる”進行設計へ

第9回までの記事でお伝えしてきた通り、
進行管理の仕事は、予定を埋めることではなく、動きやすさを整えることです。

“頑張り方”が継承される現場の多くは、
スケジュールの中にほとんど余白がありません。

逆に言えば、余白を設計できれば、
「頑張るしかない」という状態から抜け出すことができます。

私がよく行っているのは、次のような工夫です。

  • 修正フェーズは「確認+再修正」の2ターンを最初から想定しておく
  • クライアント提出日の前日に“チーム内締切”を置く
  • 週に一度、会議を入れない“作業のための時間帯”をブロックする

どれも特別な方法ではありませんが、
「前提として余白を入れる」ことが大事です。

スケジュールの中に“呼吸”をつくると、
メンバーの表情ややりとりも、少しずつ落ち着いてきます。

引き継ぐべきは「頑張れば何とかなる」ではなく「こうすれば無理をしなくて済む」

次の世代に渡すべきなのは、
「私も昔はこうやって頑張ってきた」ではなく、

「こう整えておけば、同じような無理をしなくて済むよ」

という具体的な工夫だと考えています。

たとえば、こんなものです。

  • トラブル時の初動フロー(誰が・どこに・何を連絡するか)
  • 修正依頼を書くときのテンプレート(目的/背景/具体的な指示)
  • レビュー観点のチェックリスト
  • 休む・遅れるときの連絡ルール

これらは、一度つくっておくと、
担当者が変わっても、無理なく現場を回しやすくなります。

「この仕組みがあるから、前より安心して働ける」
そう感じてもらえるものを残していくことが、
マネジメントの継承だと思います。

「支え合うマネジメント」が残る現場へ

プロジェクトの歴史が長くなるほど、
良くも悪くも「こうするものだよね」という空気ができていきます。

その中には、もう役目を終えたやり方も含まれているはずです。
それを見直し、今のメンバーと作り直していくこと。

それは、過去を否定することではなく、
未来のチームを守るための更新だと私は考えています。

  • 誰か一人が背負って頑張るのではなく
  • 仕組みと会話で、互いに支え合う

そんな現場を次の世代に引き継げるように、
今日の進行表やルールづくりを、少しずつ整えていきたいですね。

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投稿者

山本 莉央
山本 莉央
制作会社でディレクターを8年経験。複数の案件を同時進行しながら、チームマネジメントやクライアント対応を担当してきた。“現場で回す力”と“人が動く段取り”を重視し、実践的な進行管理術をテーマに執筆。現在はチーム育成や業務改善のコンサルティングも行っている。