1〜2年目の“中だるみ”をどう越えるか 現役が語る“続ける力”の磨き方

“このままでいいの?”と思った日の話 制作現場の1〜2年目が揺れる理由

制作現場にいると、1年目と2年目のあいだに“見えない段差”があることに気づく。
最初の数か月は、新しい用語に追いつくこと、タスクを覚えること、上司の指示を理解することで精一杯だ。

だが、半年を過ぎたころ。“慣れた”はずの仕事に、ふとした瞬間、ざらつく違和感が走る。
「この作業、ずっと私がやる役割なんだろうか」
「もう少しできると思っていたのに、同じところで止まってしまう」
「向いていないのかもしれない」

その揺れは、突然やってくる。
指示どおり進めた案件が褒められても、心の奥に小さな空洞が残る。
かと思えば、失敗した日には、その空洞が一気に広がって、
「続ける意味はどこにあるのだろう」と自分を追い詰めてしまう。

私はこれまで、多くの1〜2年目ディレクター、デザイナー、ライターたちを取材してきた。
彼らの言葉に共通していたのは、
“できるようになった”という満足よりも、“このままでいいのか”という不安だった。

この揺れには理由がある。
そして、揺れることそのものが“仕事を覚えた証拠”でもある。
そんな話を、今回は記したい。

「慣れたはずなのに、手が止まる」 1年目が終わる頃に訪れる違和感

ある制作会社で新卒として働き始めた女性ディレクターは、
入社して10か月が経ったころ、突然、進行表の前で手が止まったという。

「いつも通りにやれば進むはずなのに、違うんです。
“これ、私がずっとやる仕事なのかな”って急に思ってしまって。」

その“急に”は、多くの現場で繰り返されている。

最初の半年は、やるべきことが目の前に積まれている。
“覚える”“ついていく”“こなす”という指針がある。
だが、1年目の後半から2年目にかけて、
目の前のタスクが“できるようになった”瞬間、
逆に道が見えなくなることがある。

ある若手デザイナーは言った。

「任される範囲が増えたのに、
なぜか“自分が成長している感じ”がしないんです。」

毎日こなしているはずの作業が、急に輪郭を失う。
それまで支えていた“成長している実感”が薄れ、
自分の立ち位置を測れなくなる。

この違和感は、能力不足ではない。
むしろ“現場を見る視野が広がった証拠”だ。
だが、その変化を自分で言語化するのは難しい。

だからこそ、揺れが生まれる。

「任されること」と「任され続けること」のあいだにある、見えない境界線

取材の中で印象的だったのは、
2年目のWebディレクターが語った言葉だ。

「最初は、任されるのが嬉しかったんです。
でも、1年が経つと“それしか任されていない”気がしてしまって。」

任されることは成長の証拠。
だが、任され続けることは“固定化”に見えることがある。

自分ができることが増えたのに、
役割が変わらないまま時間だけが過ぎる感覚。
それが、揺れを大きくする。

また、あるエンジニアはこう話した。

「周りが“できる人”に見えて、自分だけ止まってる気になるんです。
でも実際には、みんな同じように迷っているのがわかって、すこし安心しました。」

“周りが順調に見える”のは、1〜2年目の特徴だ。
他者の成長は外側から見えるが、自分の成長は内側にあるため、
比較すると“遅れている”錯覚が生まれる。

しかし、現場の観察を続けていると、
成長の速度は誰も一定ではない。
むしろ、揺れた時期にこそ“方向性の軸”が育っていく。

「向いてないのかも」と思った日は、視野が広がった証拠

“向いていないのでは”という言葉は、1〜2年目の取材でよく聞く言葉だ。

だが、ベテランディレクターはこの悩みに対して、
まったく別の視点を語ってくれた。

「向いてないと思うのは、“向いている状態”を知ってきたからですよ。
仕事の全体像が見えてくると、自分の位置も見えるようになるから。」

つまり、“向いていないかも”という感情自体が、
すでに一段上の視点に移り始めた証拠なのだ。

もう一つ、印象に残った言葉がある。

「続けられる人って、“完璧にできた日”よりも、
“うまくいかなかった日”に自分を立て直せる人です。」

揺れがある日こそ、成長の入口。
迷った分だけ、自分の形がはっきりしていく。

“慣れ”が壁になる時期を、どう越えるか

2年目のデザイナーに、
「一番つらかった時期はいつでしたか?」と聞いたことがある。
返ってきた答えはこうだった。

「半年〜1年目です。できることが増えたのに、
“何をしたら成長になるのか”がわからなくなって。」

この“成長の見失い”を越えるために、
彼女が始めたのは意外にも簡単なことだった。

・会議で気になった言葉をメモする
・自分の作業の“理由”を小さく書き残す
・話し合いで「なぜ?」を1回多く聞く

この“わずかな習慣”が、思考に芯をつくったという。

あるディレクターは言った。

「走りながら考えるだけじゃなく、
考えたことをどこかに置いていくと、
自分の進み方が見えるようになります。」

1〜2年目は、とにかく流れに巻き込まれやすい。
だからこそ、“自分の歩幅を残す作業”が必要なのだ。

揺れた日の記録は、未来の自分を助ける

最後に、これまでの取材の中でもっとも印象に残った言葉を一つ。

「悩んだ日のメモが、あとで自分の支えになるんです。」

悩んだ日には、胸の奥が重くなる。
仕事に自信が持てず、
まわりの誰もがうまくいっているように見える。
だが、その揺れを記録しておくと、
数か月後に読み返したとき、
「この頃の自分、確かに変わっている」と気づく。

1〜2年目の揺れは、“停滞”ではなく“変化”の前触れだ。
揺れるということは、学びが積み重なり、
自分なりの視点が生まれてきたということ。

現場は静かだが、
その中で確かに人は変わっていく。

揺れた日の記録は、
未来の自分への手紙になる。

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投稿者

黒川 結衣
黒川 結衣
業界誌の編集者を経て独立。取材・インタビューを中心に、Web制作現場の“リアル”を記録し続けている。現場で働くディレクターやクリエイターの声を掘り下げ、チームカルチャーや業界トレンドの変化を丁寧に伝える記事で支持を集める。