SNSディレクターとして数年経験を積んでくると、仕事の重心が少しずつ変わってくる。
「投稿を作る人」から、「企画を動かす人」へ。
そしてさらにその先には、「企画を通す人」という役割がある。
投稿本数はこなせる。数字も読める。
小さな企画なら自分で回せる。
でも“中堅の入口”で求められるのは、もう一段深いレイヤーだ。
「この発信をどう通すか」
「誰を巻き込み、どう設計するか」
「どのリスクを把握して、どこで判断するか」
SNSはスピードが命だけど、同時に“意思決定の場”でもある。
若手の頃とは違い、「作業」ではなく「役割」としての発信設計が求められる。
この第20回では、SNSディレクターが若手から中堅に進むとき、
どんな視点と判断が必要になり、“役割の輪郭”がどう変わるのかを深掘りする。
後半には、僕自身がその変化に戸惑いながらも、企画を通す役割を自覚した日のコラムを添えた。
目次
SNSディレクターは“投稿者”から“設計者”へ変わる
SNSの発信は、現場に近いほど「手を動かすこと」が求められる。
でも数年経つと、求められるのは“手の速さ”ではなく、“企画を通す力” に変わる。
■ 中堅の役割は「発信の交通整理」
SNS運用には、実はさまざまな関係者がいる。
- 企画チーム
- デザイナー
- ライター
- クライアント
- 広報
- 経営層
若手は“自分の投稿”を作ればよかったけれど、中堅は
「この企画を通すために、誰の理解が必要か」 まで考えなきゃいけない。
すごく地味に聞こえるかもしれないけど、企画を通す=信頼を得る。
発信の主導権を持てるようになるのは、この“交通整理力”が育ったときだ。
■ “正しい投稿”より“正しい流れ”を作る
若手の頃は、1つの投稿を上手く仕上げるのがメインミッションだった。
でも中堅は違う。
- いつ誰が出すか
- どの文脈につなげるか
- 投稿同士の距離感
- リスクや反応の想定
この“流れの設計”が基準になる。
SNSは1本ずつ見ると雑然としてるけど、連続で見ると“物語”が走ってる。
中堅は、その物語の脚本を握る役回りだ。
■ 「判断する」ことが仕事になる
SNSの現場で一番ストレスが大きい瞬間って、
「どっちが正しいか分からないけど、決めなきゃいけない」時だと思う。
- 出す? 出さない?
- トレンドに乗る? 乗らない?
- キャンペーンを押す? 抑える?
- 写真を変える? このままいく?
若手は悩んでOK。でも、中堅は悩んだまま止まれない。
だからこそ“判断力”が役割に組み込まれていく。
その判断の軸になるのが、「企画を通したい理由」+「発信の目的」 のセット。
ここが固まった人は、どれだけ現場が揺れても動ける。
企画を通す人が持っている“設計の視点”とは
SNSの中堅に必要なのは、「全体を1歩上から見る」視点 だ。
投稿者ではなく、設計者としての目線。
■ 1)“企画の温度差”ではなく“企画の流れ”を見る
SNSは数字が上下しやすい。
でも、中堅は1本単位の「好調/不調」で判断しない。
流れを見る。
- 過去5本の動き
- キャンペーン期間との相性
- フォロワーの生活リズム
- 時間帯の揺れ方
- 反応の“質”の変化
これらを横断して見られる人は、企画の耐久性が読める。
■ 2)発信の“地図”を描ける
中堅は「今日の投稿」を作る人ではなく、
「1ヶ月後・3ヶ月後の投稿の地図」を描く人 になる。
- シリーズ企画の展開
- 季節イベントとの連携
- 他部署の動き
- 広報施策との調整
- 外部トレンドへの接続
発信の世界を“地図化”できる人は、チームの中で頼られる。
■ 3)リスクは“避ける”より“扱う”
SNSは炎上や誤解のリスクが常にある。
若手は避けるのが仕事、中堅は“扱い方”が仕事。
- 表現のグレーをどこまで許容するか
- 誤解が起きたときの対処
- プランB・Cの準備
- 事前説明のラインの引き方
この“扱う力”があると、企画の説得力が跳ね上がる。
■ 4)関係者の“期待値”を整える
中堅の仕事の多くは、じつはコミュニケーション設計だ。
企画を通すためには、意図を共有し、関係者の期待を整える必要がある。
- 何を目指す企画なのか
- 何を期待すべきか
- どこからが成功で、どこまでは許容か
- 何が起きたらやり直すか
これらを事前に整えると、企画は驚くほどスムーズに走る。
僕が“投稿者”から“企画を通す人”へ変わった日
SNSの企画を任され始めた頃、僕はずっと「投稿の質」ばかり気にしていた。
写真のトーン、文章のテンション、CTAの位置。
とにかく“うまく作る”ことに集中していた。
ある時、クライアントの大型キャンペーンで、僕は数十本の投稿を担当した。
テーマも構成も、全部自分で決めた。
「これはいける」と思っていたし、実際に最初の数本の反応はよかった。
でも、途中から空気が変わった。
反応が落ち、数字が沈み、タイムラインとの相性も悪い。
焦って数本作り直したけど、ずっと噛み合わなかった。
その時、上長からこう言われた。
「村上、お前が作ってるの“投稿”だろ。
企画を通すってのは、投稿そのものじゃなくて、
“関係者みんなを動かす流れ”を作ることだぞ」
正直、最初は何を言われているのか分からなかった。
でも話を聞くうちに、僕は自分の失敗に気づいた。
僕は、
「投稿を上手く作ること」=「企画を成功させること」
だと思い込んでいた。
でも、実際の企画はもっと広い。
- 他部署との連携
- キャンペーン時期の空気感
- 数字が落ちた時の判断
- 誤解リスクの処理
- 意図説明の仕方
- 投稿の並び順と導線
これら全部を扱って初めて“企画を通す”になる。
その視点を持てた瞬間、自分の中でスイッチが切り替わった。
SNS運用は「投稿の仕事」じゃなくて
「流れを設計する仕事」 なんだと腹落ちした。
あの日から、僕は投稿を作る前に「流れ」を見るようになった。
誰が動くのか、どこが詰まるのか、何を守るべきなのか。
結果として企画は安定し、関係者からの信頼も増えた。
あの経験を境に、役割の景色が変わった。
自分が立っている場所よりも、もっと少し広いところを見られるようになった。
SNSディレクターとしての仕事が、前より面白く感じられるようになった。

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