“今年の棚卸し”が次の一年を変える 忙しい時期こそ見直したい仕事の習慣

コメントが伝わらなかった理由を振り返る 来年に活かす“意図の点検”

年末になると、自然と仕事に“一区切り”の影がさします。
案件は走り続けていても、手元のレビューやコメントを見返したくなる時期…
それが12月後半の現場だと思います。

Webディレクターにとって、年末は
「自分のコメントが現場でどう伝わっていたか」
を振り返る絶好のタイミングです。

今年、デザイナーやPMに伝えたコメントの中で、
意図が届かなかったものはなかったか。
もしくは、思ってもいない解釈をされてしまった瞬間はなかったか。

コメントが“伝わらなかった理由”を点検することは、
来年の仕事の質を変える小さな仕込みになります。

今回は、1〜3年目の若手に向けて、
今年のレビューワークを棚卸しし、
来年のコメント精度を上げるための“意図の点検” をまとめます。

コメントが伝わらなかった理由を「意図」で見直す

1. コメントが伝わらないのは“言葉の不足”ではなく“意図の揺れ”

若手の頃、僕もよく
「もっと説明すべきだったかな」
「言葉が足りなかったのかもしれない」
と反省していました。

けれど本質的には、
言葉より“意図”が揺れている時にコメントは伝わらなくなる
ことが多いんです。

例えば、
「この導線、もう少しすっきりさせたいです」
というコメント。

意図が

  • 判断を減らしたいのか
  • 情報量を整理したいのか
  • 別の導線を主役にしたいのか

によって、同じ言葉でもデザイナーが受け取る意味はまったく違います。

年末だからこそ、
“今年伝わりづらかったコメント”をひとつ選んで
「その時、伝えたかった意図は何だったか?」
を書き出してみてください。

意図の揺れを点検すると、来年のコメントが劇的に変わります。

2. 「体験の意図」と「成果の意図」が混ざると、コメントはぼやける

振り返りをすると、コメントが伝わらなかった場面の多くが
複数の意図を同時に扱ってしまった時でした。

  • UXとしては迷いを減らしたい
  • プロダクトとしてはCVを上げたい
  • クライアントとしては説明を厚くしたい

これらの意図が頭の中で混ざったままコメントすると、
受け手は“どの方向で判断すべきか”が分からなくなります。

年末は、こうした“意図の混在”に気づきやすい季節です。
今年のレビューを3つほど見返して、
次の質問をしてみてください。

「このコメント、何の意図を優先していた?」
「どの意図を切り捨てる判断をした?」

答えが曖昧なところが、来年の成長ポイントになります。

3. コメントを“形容詞”で書くと伝わりにくい

「すっきり」
「自然」
「わかりやすい」
「強めたい」

今年、こうしたコメントを手元に残していませんか?

形容詞は便利ですが、
受け手に“構造的な理由”が届きません。

もし来年コメントの精度を上げたいなら、
形容詞を
“構造の言葉” に置き換える練習がおすすめです。

例:
「すっきり」
→ 判断点をひとつ減らしたい
→ 情報の出る順序を整えたい

「自然」
→ 主導線に視線を誘導したい
→ ユーザーの期待と画面構造を合わせたい

“どの構造を整えたいのか”が言える人は、
来年以降、デザイナーからの信頼が段違いに変わります。

4. 伝わるコメントは「意図 → 理由 → 仮説」で構成される

来年の方向性づくりとしておすすめなのが、
コメントの型を固定してしまうこと。

僕が使っているのは次の順番です。

  1. 意図(何を守りたい/変えたいのか)
  2. 理由(どの構造がそれを阻害しているのか)
  3. 仮説(こうすると解消できるのでは?)

例:
「今回“初回ユーザーの迷いを減らしたい”意図があります。
 現状は情報が早く出てくる構造になっているため判断が難しいので、
 文の段階を分けて整理してはどうでしょうか?」

来年のコメントが格段に伝わりやすくなります。

5. 年末にやるべきは“意図の棚卸し”

年末の振り返りとして最も効果があるのは、
今年コメントで扱った意図をすべて書き出すことです。

  • 迷いを減らしたい意図
  • 導線を守りたい意図
  • 情報量を整えたい意図
  • ブランドの印象を揃えたい意図
  • 要件上の制約を守りたい意図

これらを“見える化”すると、
自分がどの意図を得意にしているのか、
またどの意図で迷いやすいのかが明確になります。

棚卸しは、来年の判断力の土台になります。

「伝わるはずのコメント」が届かなかった日 年末に気づいた“意図の癖”

僕が2年目の年末に体験した出来事です。

その頃、僕はレビューの言葉選びにだいぶ慣れてきていて、
コメントもある程度スムーズに書けるようになっていました。

そんなある日、
デザイナーからやさしく指摘されたことがあります。

「海斗くんのコメントって、
 方向は合ってるんだけど、
 “どの意図で話してるのか”が少し分かりにくいときがあるね。」

最初は意味がつかめませんでした。
「ちゃんと伝えているつもりなのに…」
という気持ちもありました。

でも年末で少し時間ができたので、
自分のコメントをまとめて読み返してみました。

すると、驚くほど
意図の癖
が浮き彫りになりました。

・ユーザーの“迷い”には敏感
・導線の整合性はよく見ている
・でも、成果(CV)の意図を扱う時だけ言葉が弱い

つまり、僕は
“迷わせたくない意図”を過剰に優先していた のです。
他の意図が薄くなっていた理由は、
自分の中で“意図の偏り”があったからでした。

そこから僕は、レビューの前に
「今回のコメントは、どの意図を扱う話なのか?」
と一行メモを書くようになりました。

すると、面白いほど
コメントが伝わりやすくなったのです。

デザイナーからも、
「意図の地図があると判断しやすいね」
と言われました。

あの日気づいたのは、
コメントの上手さではなく、
意図の扱い方そのものが“伝わる/伝わらない”を決めている
ということでした。

年末にふと立ち止まり、
自分の意図の癖を見つめたあの時間は、
今振り返ると大きな転機だった気がします。

来年、また新しい案件が始まっても、
この習慣だけは手放さないだろうと思います。

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投稿者

中村 海斗
中村 海斗
デザイナーからUXライターへ転身。構成と表現のバランス感覚に優れ、デザインの意図を“言葉”として翻訳することを得意とする。デザインとライティングの橋渡し役として、UIテキストや構成設計、トーン&マナーの整備を支援している。