年が切り替わるタイミングは、
自然と「これから何を積み上げるか」を考える時期だと思います。
新しい知識。
新しい技術。
新しい役割。
けれど、2026年をどう働きたいかを考えたとき、
僕の中に浮かんできたのは、
何かを増やすというより、
これまでの仕事を静かに振り返る感覚でした。
特に、言葉の使い方についてです。
去年までの現場を思い返すと、
僕はずいぶん多くの言葉を足してきました。
足りないと思えば補い、
誤解されそうなら説明を重ね、
迷いが生まれそうなら、前もって注釈を入れる。
そうやって言葉を増やすことで、
仕事を前に進めてきた実感もあります。
一方で、
言葉を足した結果、
意図が見えにくくなった場面もありました。
2026年は、
この違和感を置き去りにせず、
「言葉を足さない判断」ができるかどうかを、
ひとつの軸にして仕事をしていきたいと考えています。
ディレクターとして仕事をしていると、
「言葉を足す判断」は、正しさとして選ばれやすいと感じます。
補足を入れる。
前提を説明する。
念のための一文を添える。
どれも相手を思った行為で、
特にクライアントやエンジニアとのやり取りでは、
自然にそうした判断を重ねてきました。
去年まで:言葉を足すことで守っていたもの
去年までの僕は、
言葉を足すことで、
仕事の不確実さを減らそうとしていた気がします。
クライアントに対しては、
意図を誤解されたくないという思いが強くありました。
UIの背景、検討過程、採用しなかった理由。
できるだけ丁寧に書き、
納得してもらえる材料を揃える。
それは誠実さでもありましたし、
当時の自分にとっては必要な姿勢だったと思います。
エンジニアに対しても同じです。
仕様を曖昧に受け取られないように、
条件や前提を言葉で補い、
想定外の解釈が生まれないように説明を重ねる。
そうやって、
言葉で現場を囲うような仕事をしていました。
クライアント対応で感じた違和感
転機になったのは、
あるクライアント案件でのやり取りでした。
UIの方向性について、
いつも以上に丁寧なコメントを書いたときのことです。
背景、狙い、懸念点、代替案。
自分なりに整理し、
過不足なく伝えたつもりでした。
ところが返ってきたのは、
想定よりも多くの質問でした。
「結局、どれを一番重視すればいいのか」
「最終的には、どの案を選びたいのか」
そのやり取りを通して、
自分が示したかった“軸”が、
相手には見えにくくなっていたことに気づきました。
情報は揃っている。
でも、判断しづらい。
言葉を足したことで、
選択肢が増えすぎてしまっていたのです。
そのとき初めて、
「丁寧に説明すること」と
「判断しやすくすること」は、
必ずしも一致しないのだと実感しました。
対エンジニアで起きていた、別の問題
同じような違和感は、
エンジニアとのやり取りでも感じるようになりました。
仕様の意図を伝えようとして、
条件や背景を言葉で補っていくうちに、
本来伝えたかった優先度が埋もれてしまう。
「これは必須なのか」
「状況次第で変わるのか」
そうした確認が増えたとき、
自分のコメントを見返して、
はっとすることがありました。
説明は多いのに、
判断の基準が見えない。
言葉を足した結果、
選択の自由度を必要以上に広げてしまっていたのです。
エンジニアにとって必要なのは、
すべての背景ではなく、
どこを固定し、どこを任せていいかという構造です。
そのことに気づいてから、
コメントの書き方を少しずつ変えるようになりました。
言葉を減らすことで、構造が見えてくる
クライアントでも、エンジニアでも、
共通していたのはこの点でした。
言葉を足すほど、
意図が伝わるとは限らない。
むしろ、
何を判断してほしいのかを先に示したほうが、
やり取りはスムーズになります。
それ以来、
コメントを書く前に、
自分に問いかけるようになりました。
この説明は、
相手の判断を助けているだろうか。
それとも、迷わせてしまっているだろうか。
去年までの僕は、
安心のために言葉を足していました。
でも、その安心は、
自分の不安を和らげるためのものだったのかもしれません。
言葉を減らすことは、
責任を減らすことではありません。
判断の位置をはっきりさせる行為です。
2026年に向けて:足す前に、選ぶ
2026年は、
この感覚をもっと大切にしていきたいと思っています。
言葉を足す前に、
その場で必要な判断は何かを見極める。
説明するより先に、
意図の位置を揃える。
去年までは、
伝えることで前に進もうとしていました。
これからは、
選ぶことで前に進める仕事をしていきたい。
言葉を増やさなくても、
意図が伝わる関わり方を探る。
そのために、
言葉との距離を保ち続ける。
2026年は、
そんな仕事の仕方を、
静かに続けていけたらと思っています。

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