技術を 全部理解しなくていい理由

新入社員として仕事を始める前、多くの人が不安に思うのは「自分はちゃんとやれるだろうか」ということだと思います。
特にWebや制作の現場では、技術用語も多くて、周りが当たり前に話していることが全部難しく見えるかもしれません。

HTML、CSS、CMS、API。
聞いたことはあるけど、正直よく分からない。
そんな状態で、「全部理解しないと仕事にならないんじゃないか」と思ってしまうのは、無理もないことです。

でも、最初にひとつだけ伝えておきたいことがあります。
新入社員のうちは、技術を全部理解していることは求められていません。

これは、慰めでも、きれいごとでもありません。
現場で実際に仕事をしてきて、はっきり言えることです。

むしろ、「全部分かろう」とすることで、仕事がやりにくくなるケースもあります。
今回は、なぜ技術を全部理解しなくていいのか、そして仕事を始める前にどんな準備をしておくと楽になるのかを、新入社員に向けて整理してみます。

仕事を始める前に 勘違いしやすいこと

新入社員が一番勘違いしやすいのは、
「最初からできる前提で見られているんじゃないか」という思い込みです。

特に、周りに先輩やエンジニアがいると、
自分だけ分かっていない気がして、焦りやすくなります。

でも実際には、
・専門用語が分からない
・仕組みが頭に入らない
・説明を聞いてもピンとこない

こういう状態は、最初はごく普通です。

仕事を任されるようになるまでには、段階があります。
最初の段階で求められているのは、
「理解していること」よりも、
「分からない状態をちゃんと把握していること」です。

それなのに、
「それくらい知っておくべきだったかも」
「聞いたら迷惑かな」
と一人で抱えてしまうと、逆につまずきやすくなります。

最初から完璧を求められていない。
この前提を、まず頭に置いておいてください。

最初に 整えておくと楽になる視点

技術を全部理解しなくていい、という話をすると、
「じゃあ、何もしなくていいの?」と思うかもしれません。

そうではありません。
大事なのは、知識ではなく考え方のほうです。

たとえば、
分からない言葉に出会ったときに、
「これは今、理解しないといけないことか」
「あとで整理すればいいことか」
を分けて考える視点を持つだけで、かなり楽になります。

すべてをその場で理解しようとすると、頭が追いつきません。
でも、「今は全体像だけ分かればいい」と割り切れると、仕事は続けやすくなります。

もうひとつ大切なのは、
自分の役割を意識することです。

新入社員の役割は、判断することではありません。
まずは、情報を受け取って、整理して、確認すること。

半年後に効いてくる準備というのは、
知識を詰め込むことではなく、
「分からないときに、どう動くか」を身につけることです。

現場に入ってから 困らないために

実際に現場に入ると、
「これ、聞いていいのかな」
「自分で調べたほうがいいのかな」
と迷う場面が出てきます。

そんなときに役立つのは、
判断軸をひとつ持っておくことです。

たとえば、
・今すぐ進行に影響するか
・自分一人では判断できないか

このどちらかに当てはまるなら、早めに聞いていい。

逆に、
・背景を知れば解決しそう
・今すぐじゃなくても困らない

こういうものは、メモしておいて後で整理すれば十分です。

助けを求めるタイミングが分からない、という不安は、
誰にでもあります。
でも、遅すぎるより、少し早いほうが現場は助かります。

「分からないこと」を減らすより、
「分からないまま進めない」ことのほうが大事です。

新入社員のうちは これで十分

改めて伝えたいのは、
新入社員のうちは、技術を全部理解しなくていいということです。

最初に必要なのは、
全部できることではなく、
ちゃんと立ち止まれること。

分からないことを分からないと言えること。
今の自分に求められている役割を理解すること。
無理に背伸びをしないこと。

それができていれば、十分です。

仕事は、少しずつ慣れていくものです。
技術も、経験と一緒に、あとからちゃんとついてきます。

まずは、つまずかずに立ち上がること。
それが、仕事を続けるための一番の準備です。

コラム:技術を分かろうとしすぎて、遠回りした話

少しだけ、僕自身の話をします。

僕も、新入社員の頃は「技術を分かっていないと仕事にならない」と思っていました。
周りの会話に出てくる専門用語が分からないのが怖くて、家に帰ってから調べて、ノートにまとめて、次の日には別の言葉が出てきて、また分からなくなる。

その繰り返しでした。

今振り返ると、あのときの僕は、
「理解できていない自分=ダメな新入社員」
だと思い込んでいたんだと思います。

でも、あるとき先輩に言われた言葉が、少し考え方を変えてくれました。

「林くん、今は全部分からなくていいよ。
それより、どこが分からないか分かっていれば大丈夫だから」

そのときは正直、あまりピンと来ませんでした。
でも、仕事を続けていく中で、その意味がだんだん分かってきました。

技術って、最初から全体像が見えるものじゃありません。
現場に触れて、失敗して、質問して、ようやくつながっていくものです。

それなのに、新入社員の段階で
「全部理解しよう」とすると、どうなるか。

頭の中が情報でいっぱいになって、
何が大事で、何が後回しでいいのかが分からなくなります。

僕自身、当時は
「分からないまま進めるのが怖い」
という気持ちが強すぎて、逆に動けなくなることがありました。

今、教える側の立場になって思うのは、
新入社員に必要なのは、知識の量ではなく、安心して立ち止まれる感覚だということです。

分からないときに、
「今はここまで分かっていればいい」
「これは後で聞こう」
と判断できるだけで、仕事はずっと楽になります。

技術を全部理解しなくていい、というのは、
成長を止めていい、という意味ではありません。

むしろ、
長く続けるために、最初に力を入れすぎない、という話です。

仕事は、短距離走じゃなくて、かなり長い距離を走るものです。
最初の数か月で全部を抱え込もうとすると、途中で息切れします。

だから、新入社員のうちは、
「分からない状態でも仕事は進む」
という感覚を、少しずつ身につけてほしいと思っています。

それができれば、技術はあとから、ちゃんと追いついてきます。

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投稿者

林 颯真
林 颯真
フロント寄りの技術に強いテクニカルディレクター。
実装やCMSの仕組みを、現場視点でわかりやすく翻訳するのが得意。
エンジニアとチームの橋渡し役として、実務の整理に力を発揮する。