判断する前に 見ておいてほしい視点

新入社員として仕事を始める前、多くの人が「ちゃんとやらなきゃ」と考えます。
早く役に立たなければ、迷惑をかけてはいけない、判断を間違えてはいけない。
その気持ちは、とても自然です。

ただ、現場に入ってから振り返ると、
最初に求められていることと、自分が背負ってしまっていることが、少しずれている
というケースをよく見かけます。

判断力は、いきなり求められるものではありません。
それよりも前に、見ておいてほしい視点があります。

仕事は「何を決めるか」よりも、
「どう見て、どう考え、どこで止まるか」で楽にも苦しくもなります。

この回では、知識や手順の話はしません。
新入社員が、現場に入る前に知っておくと、
最初の半年が少し楽になる考え方について書いていきます。

読んでほしいのは、これから現場に入る人。
そして、新人を迎える側の人にも、
「最初はここまででいい」と確認する材料として使ってもらえたらと思います。

仕事を始める前に 勘違いしやすいこと

新入社員が最初につまずきやすいのは、スキル不足ではありません。
多くの場合、前提の思い込みです。

仕事を始める前、こんなふうに考えていないでしょうか。
早く一人前にならなければいけない。
自分で判断できるようにならなければいけない。
分からないまま止まるのは良くない。

でも、現場の目線から見ると、
それらは最初から求められていることではありません。

新入社員に期待されているのは、
「正しい判断」ではなく、
状況を正しく見ようとする姿勢です。

判断は、経験と文脈がないとできません。
その文脈をまだ持っていない段階で、
判断の正しさを求められることはほとんどありません。

むしろ、最初のうちは
・どこで迷ったのか
・何が分からなかったのか
・どう見えていたのか
を共有してもらえるほうが、現場としては助かります。

できなくて当然なことを、
「できなければいけない」と思い込むと、
余計な緊張や空回りが増えてしまいます。

それ、最初は求められていません。

最初に 整えておくと楽になる視点

仕事を始める前に整えておくと楽になるのは、知識ではありません。
考え方と立ち位置です。

新入社員のうちは、
「判断する人」になる必要はありません。
「判断の材料を集める人」で十分です。

たとえば、指示を受けたとき。
すぐに正解を出そうとするよりも、
・どこが決まっているのか
・どこがまだ決まっていないのか
・誰が最終的に決めるのか
を把握することのほうが重要です。

この視点を持っているだけで、
立ち回りはかなり安定します。

また、優先順位の感覚も、最初に整えておきたいポイントです。
すべてを完璧にやろうとすると、判断が重くなります。

最初の半年で効いてくるのは、
「全部やる」ではなく、
「今はどこまでやればいいか」を考える癖です。

これは教える側にとっても同じです。
新人に何を任せ、どこで止めるか。
その線を共有できていないと、
新人は必要以上に背負ってしまいます。

現場に入ってから 困らないために

現場に入ってから困りやすいのは、
分からないことそのものではありません。
分からない状態を、どう扱えばいいか分からないことです。

迷ったときの判断軸として、
覚えておいてほしい考え方があります。

それは、
「これは今、自分が決めるべきことか?」
と一度立ち止まって考えることです。

新入社員の多くは、
自分が決めるべきでないことまで、
一人で抱え込んでしまいます。

判断を急ぐよりも、
・どこまで理解できているか
・何が足りないか
を言葉にするほうが、現場では評価されます。

助けを求めるタイミングも同じです。
行き詰まってからではなく、
迷いが生まれた時点で共有する
それだけで、修正は小さく済みます。

これは、甘えではありません。
判断の質を保つための、立派な仕事の一部です。

新入社員のうちは これで十分

仕事を始めたばかりの時期に、
すべてを理解し、すべてを判断できる必要はありません。

できなくていいことを、
できないままにしておく勇気も必要です。

見る。
聞く。
整理する。
共有する。

新入社員のうちは、これで十分です。

判断は、その先にあります。
経験と文脈が積み重なったあとで、
自然とできるようになります。

この文章を読んだあと、
少しだけ肩の力が抜けていたら嬉しいです。

次にやるべき一歩は、
「ちゃんと見ること」。
それだけを、覚えておいてください。

コラム|判断できなかった新人時代の話

新人だった頃、私は「早く判断できるようにならなければ」と強く思っていました。
会議で意見を求められると、分からなくても何か言わなければ、と焦っていました。

あるとき、UI文言の確認を任されたことがあります。
仕様書を読み、画面を見て、
「たぶん、こうだろう」と思う案を出しました。

結果は、やり直しでした。
理由は単純で、前提が違っていたのです。

そのとき、先輩に言われた言葉が印象に残っています。
「判断が早いのは悪くないけど、今はまだ見なくていいところまで見ていない。」

私は、決めることばかり意識して、
見るべき情報を十分に見ていませんでした。

それから、やり方を変えました。
すぐに結論を出すのをやめて、
「ここまでは理解できました」
「ここからが分かりません」
と共有するようにしました。

すると、不思議なことに、
仕事がスムーズに進むようになりました。

判断をしなくなったわけではありません。
判断の前に、見る時間を取るようになっただけです。

後から振り返ると、
新人のうちに求められていたのは、
正解を出すことではなく、
判断に必要な視点を集めることだったのだと思います。

今、新人を迎える立場になって、
当時の自分を思い出すことがあります。

だからこそ、
最初から判断を背負わせない。
見るべきところを一緒に確認する。

そのほうが、
結果的に判断できる人は早く育つと感じています。

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投稿者

小川 紗英
小川 紗英
UIデザイナーからUXライターへ転身。SaaS開発チームでの経験を活かし、「デザインと言葉の橋渡し役」として活動中。UI文言やオンボーディング設計、エンプティステートなど、プロダクト体験を支える言葉づくりを得意とする。