分からないままでも 仕事は進められる

分からない企画を 進める判断軸

企画の仕事に入って、最初に戸惑うのは「分からないことが多すぎる」という感覚です。
企画の背景も、判断の基準も、最終的なゴールも、はっきりしないまま話が進んでいく。
それでも現場は止まらず、次の打ち合わせや次の締切がやってきます。

このとき、多くの人が二つの極端な選択に引っ張られます。
一つは、分からない状態を無理やり埋めようとして、情報を集めすぎてしまうこと。
もう一つは、分からないままでも仕方ないと考えて、深く考えずに進めてしまうこと。

どちらも、長く続けるとしんどくなります。
前者は疲弊し、後者は後から手戻りが増える。

最初に知っておきたいのは、
分からない状態は、仕事では普通に起きるということです。
ただし、分からないまま放置していいわけではありません。

仕事は、分からない状態を前提にしながら、少しずつ拾い直していくものです。
そのときに必要なのが、「分からない企画をどう進めるか」という判断軸です。

なぜ企画は「分からない状態」で始まるのか

企画が最初から明確な状態で渡されることは、実はあまり多くありません。
理由は単純で、企画そのものが「途中経過の集合体」だからです。

企画には、必ず未確定要素が含まれます。
・本当にそれが正解かどうか
・誰がどこまで判断するのか
・状況が変わったときにどう調整するのか

こうした要素は、最初から全部決まっているわけではありません。
むしろ、進めながら決まっていく。

新人や経験の浅い人ほど、ここで戸惑います。
学校や研修では、「前提が整った状態」から課題が与えられることが多い。
だから、前提が曖昧なまま進むことに、不安を感じやすい。

しかし現場では、
「分からないから止まる」よりも、
「分からないけど仮で進む」ほうが、よほど多い。

ここで重要なのは、
分からない状態そのものを問題にしないことです。
問題にすべきなのは、
何が分かっていなくて、何が仮なのかが整理されていないことです。

企画が分からないと感じるとき、多くの場合、
情報が足りないのではなく、情報の位置づけが整理されていない。

・これは仮説なのか
・これは前提なのか
・これは後で変わる前提なのか

この切り分けができていないと、
分からなさは不安に変わります。

逆に言えば、
分からない部分を「分からないまま置く」場所を決められれば、
企画は前に進めます。

分からない企画を進めるための判断軸

分からない企画を進めるときに必要なのは、
正解ではなく判断軸です。

まず一つ目の軸は、
今、決めなくていいことは何かを見極めること。

すべてを同時に明確にしようとすると、企画は動かなくなります。
だからこそ、
「これは後で変わってもいい」
「これは今は仮でいい」
という前提を置く。

二つ目の軸は、
誰の判断を待っている企画なのかを意識すること。

企画が止まっているとき、
内容の問題ではなく、判断する人が不在なケースは多い。
その場合、企画を詰め続けても前には進みません。

三つ目の軸は、
この企画は、次に何を決めるための材料なのかを考えること。

企画はゴールではなく、判断のための材料です。
どこまで考えれば十分なのかは、
「次の判断に必要な情報が何か」で決まります。

この三つの軸があると、
分からない企画に対して、無理に答えを出さなくて済みます。

分からない状態を抱えたままでも、
「今はここまででいい」と線を引ける。

それが、仕事を前に進める判断です。

コラム|分からない企画を「分からないまま」出せなかった頃の話

新人の頃の僕は、分からない企画をそのまま出すことができませんでした。
分からない状態で出すのは、無責任だと思っていたからです。

だから、
背景を調べる。
競合を見る。
それらしい理由を集める。
自分の中で「これなら大丈夫」と思えるところまで、無理やり詰める。

結果として、
企画はそれなりに整って見えるけれど、
時間がかかりすぎることが増えていきました。

あるとき、先輩に言われた言葉があります。
「それ、全部分かってから出そうとしてない?」
当時は、少し責められているように感じました。

でも続けて、こう言われました。
「分からないところは、分からないまま出していい。
その代わり、どこが分からないかは分かっておこう。」

その言葉で、考え方が変わりました。

分からない企画を出すこと自体が問題なのではなく、
分からない部分を自分の中で整理せずに出すことが問題だった。

それ以降、
企画を出すときに意識するようになったことがあります。

・ここは仮説です
・ここはまだ判断材料が足りません
・ここは次の打ち合わせで決めたいポイントです

こうした前提を添えるだけで、
企画は「未完成」ではなく、「途中段階」として扱われるようになりました。

分からないままでも、
進めていい企画はあります。
ただし、分からなさを放置した企画は、後で必ず詰まる。

この違いを知れたことは、
自分の中では大きな転換点でした。

今でも、企画が分からないまま進むことはあります。
でも、分からないことを恐れなくなった。

分からないことを、
どこに置いておくかを決められるようになったからです。

まとめ|分からない状態は、前提として受け取る

分からないままでも、仕事は進められます。
それは、現場に入る前に知っておくと、かなり楽になる事実です。

ただし、
分からないまま放置していいわけではありません。

分からない部分を整理し、
仮として扱い、
次に拾う場所を決める。

それだけで、企画は前に進みます。

仕事が進むにつれて、
分からなかったことは少しずつ見えてきます。
最初から全部を理解している必要はありません。

判断軸を持って、
分からない状態と一緒に進む。

それが、企画の仕事を続けていくための現実的なやり方です。

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投稿者

武 流星
武 流星
SEOと企画設計に強いコンテンツディレクター。
“読まれる理由”を構造化し、数字と体験の双方から企画を組み立てるタイプ。
軽快な語り口と鋭い分析で、若手にも人気の指導スタイル。