あなたがまだ知らない Webの現場の本当の姿

スケジュールは 引いているだけじゃない

「Webディレクターって、スケジュールを引く仕事ですよね?」
たぶん、この言葉を言われたことがある人は少なくないと思います。

確かに、進行表は作ります。
日付も入れます。
締切も並びます。

でも、実際の現場でやっていることは、「線を引く」よりもずっとごちゃっとしています。
むしろ、きれいなスケジュールがそのまま進むことのほうが珍しい。

この記事では、「スケジュールは引いているだけじゃない」という話をします。
大変さアピールをしたいわけではありません。
知られていないだけで、ちょっと面白い側面がある、という話です。

Webの現場の裏側って、意外とこういうところでできています。

スケジュールは「予言」じゃない

最初に引くスケジュールって、よく考えると不思議なものです。
まだ作っていないものの完成日を決める。
まだ出ていない修正を見込む。
まだ起きていないトラブルの余白を入れる。

これ、予言に近い作業です。

でも、誰も「当たる」とは思っていません。
スケジュールを引く側も、引かれる側も、だいたい分かっています。
この通りにはいかないだろうな、と。

それでもスケジュールを引くのは、当てるためではありません。
ズレたときに、どこを動かせばいいかを分かるようにするためです。

よくある誤解に、「スケジュールが崩れる=失敗」というものがあります。
実際は逆です。
崩れる前提で組まれているから、立て直せる。

Webの現場でのスケジュールは、予定表というより、調整用の地図に近い。
現在地が分かって、道を変えられる。
それが役割です。

本当にやっているのは「間の調整」

スケジュール管理で一番時間を使っているのは、日付入力ではありません。
実際にやっているのは、「間」を見ることです。

この作業とこの作業の間。
この人とこの人の間。
この判断と次の判断の間。

たとえば、デザインの初稿が出たあと。
すぐに修正に入れるように見えても、実は確認が一段階挟まっている。
その確認を誰がいつやるのか。
そこが詰まると、全部が止まります。

スケジュール表には書きにくいけれど、現場では一番大事な部分です。
ここを見落とすと、「なんで遅れてるんだっけ?」が発生します。

だから、ディレクターはよく、
「これ、いつ見てもらえそうですか?」
「ここ、判断もらえると次に進めます」
という話ばかりしています。

スケジュールを引いているというより、人と人の動きをつないでいる感じです。

予定通り進まない日は、だいたい想定内

Webの現場では、「今日は予定通り進まなかった」という日がわりとあります。
でも、それは毎回ショックな出来事というわけではありません。

むしろ、「あ、今日はこっちが動かなかったな」と、淡々と把握されます。
そして、次の手を考える。

なぜかというと、最初から「予定通りいかない日」が含まれているからです。
全部がぴったり進む前提で組まれているスケジュールは、だいたい無理があります。

修正が増える。
確認が延びる。
急な差し込みが入る。

こうしたことが起きたときに、「じゃあ、どこをずらす?」と話せる状態を作っておく。
それが、スケジュール管理の本質です。

だから、現場では「遅れてます!」と叫ぶより、
「ここ、動かしますね」と言うことのほうが多い。

スケジュールは、守るものというより、使うものです。

「管理」というより「翻訳」に近い仕事

もう一つ、あまり知られていない側面があります。
スケジュール管理って、実は翻訳作業に近い。

エンジニアの「この実装、想定より重いです」。
デザイナーの「もう少し詰めたいです」。
クライアントの「できれば早めに見たいです」。

それぞれの言葉を、そのままスケジュールに落とすことはできません。
ニュアンスを汲んで、現実的な形に変換する必要があります。

この翻訳がうまくいくと、
「ちゃんと分かってもらえている」という感覚が、チームに残ります。

逆に、ここを雑にすると、
「なんか無理な予定組まれてる」
「話、ちゃんと伝わってる?」
という不信感が生まれます。

スケジュールは、数字の並びに見えて、実はコミュニケーションの塊です。

だからスケジュールは、ちょっと面白い

スケジュール管理は、地味な仕事だと思われがちです。
確かに、派手ではありません。
完成したサイトの表に名前が出ることも少ない。

でも、現場をよく見ると、スケジュールが空気を作っています。
余裕があるときの、チームの軽さ。
詰まっているときの、ピリッとした感じ。

それを少しだけ整える。
全部をコントロールするわけではない。
でも、放っておかない。

そういう仕事です。

「スケジュールを引いているだけ」と思われがちですが、
実際には、状況を読んで、間を調整して、言葉を翻訳して、次に進める形を作っています。

これが、あまり表に出ないWebの現場の姿です。
知るとちょっと見え方が変わる。
それくらいで、ちょうどいい話だと思います。

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投稿者

山本 莉央
山本 莉央
制作会社でディレクターを8年経験。複数の案件を同時進行しながら、チームマネジメントやクライアント対応を担当してきた。“現場で回す力”と“人が動く段取り”を重視し、実践的な進行管理術をテーマに執筆。現在はチーム育成や業務改善のコンサルティングも行っている。