Webの現場あるあるは だいたい裏側にある

何も起きなかった日は だいたい誰かが裏で走っている

現場の一日が終わって、特に大きなトラブルもなく、予定していた作業もだいたい予定通り進んで、Slackも静かで、クライアントからも変な連絡が来ていない日があります。
そういう日は、正直ちょっと拍子抜けするくらい穏やかです。
「今日は平和やったなあ」と思いながらパソコンを閉じて、でも次の瞬間、なぜかどっと疲れが出ることがあります。
この感覚、Webの現場にいる人なら一度は覚えがあると思います。

今日は何も起きなかった。
でも、その「何も起きなかった」は、本当に何も起きていなかったのか。
これが今回の話です。

Webの現場あるあるとしてよくあるのが、表から見たら静かに回っている日の裏側で、誰かがずっと小走りしているという状況です。
進行表はきれいに埋まっている。
チャットも必要最低限。
レビューも一発OK。
でも、その裏で、細かい調整や確認や軌道修正が、ほぼ人知れず処理されています。

例えば、仕様書に書いていない細かい挙動の確認。
デザイナーが「これでいいと思うんですけど」と言いながら出してきた案に対して、「これ、実装するとき地味に詰まるかもな」と感じて、エンジニアに先に声をかける。
クライアントの一文メールを読んで、「これ、今は言ってないけど、来週あたり絶対突っ込まれるやつやな」と予感して、資料を一行だけ直しておく。
そういう小さい動きが、積み重なっています。

これ、別にスーパーマン的な話ではありません。
現場では、誰かが特別すごいことをしているというより、「ヤバくなりそうな芽を踏み続けている」だけのことが多いです。
踏まなかったらどうなるかは、想像がつくと思います。
ちょっとした違和感が放置されて、翌週には立派なトラブルになって、関係者全員が集まる長いミーティングが発生します。
だから、その前に誰かが静かに処理しています。

この「誰か」が、だいたい決まって見えないのも、あるあるです。
進行管理の人だったり、ディレクターだったり、たまにデザイナーだったり、エンジニアだったり。
役職は関係なく、その現場で一番「流れ」を気にしている人が、自然とその役割を引き受けています。
本人も「自分がやってる」という意識が薄いことが多いです。
やらないと気持ち悪いからやっているだけ、という感じです。

僕自身も、振り返るとそういう日が多かったです。
一日中、何か大きな作業をした記憶はないのに、なぜか終業後にはぐったりしている。
タイムトラッキングを見返しても、「これ」と言える成果物が残っていない。
でも、翌日になってみると、現場はなぜかスムーズに回っています。
「あ、昨日のあれが効いてるな」と、少し遅れて気づくことがあります。

面白いのは、こういう日は評価されにくいということです。
トラブルが起きていないので、感謝されるタイミングもありません。
問題が表に出ていないので、「対応しました」と報告することもない。
結果として、「何も起きなかった人」になります。
でも、現場を長くやっている人ほど、この「何も起きなかった日」がどれだけ価値のあるものかを知っています。

新人の頃は、この構造が見えにくいです。
「今日は何もできていない気がする」と落ち込むこともあります。
でも実際には、誰かが裏で走ってくれているおかげで、安心して作業に集中できていることが多いです。
そして、経験を積むと、今度は自分がその側に回ります。
気づいたら、同じように小走りしています。

ここで大事なのは、「裏で走る人になれ」とか、「全部拾え」とか、そういう話ではありません。
今回のあるあるは、「何も起きなかった日は、たいてい誰かが動いている」という事実そのものです。
それを知っているだけで、現場の見え方が少し変わります。
静かな日は、サボっている日ではなく、整っている日かもしれない。
逆に、やたら騒がしい日は、もう芽が育ちすぎている日かもしれない。

僕は今でも、特に何も起きなかった日が一番好きです。
派手さはないし、武勇伝にもならないけれど、「今日もちゃんと回ったな」と思えるからです。
そしてだいたい、そういう日は、帰り道で少しだけ肩が重いです。
多分、その重さが、誰かが裏で走っていた証拠なんやと思っています。

まあ、そういうもんです。

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投稿者

西田 悠
西田 悠
元インハウスディレクター。制作現場で実際に走り回った経験をもとに、リアルな“現場視点”で記事を執筆。現場調整やクライアント対応、トラブル対応など、泥臭い部分も含めてディレクションの「本音」を語るのが持ち味。