その判断は、誰の手にある?

判断は、どの順番で手放すと現場が回る?

この企画も、今回でひと区切りです。

「その判断、どこで分けてる?」というテーマで、仕様、デザイン、企画と見てきました。最後に扱うのは、PMとして一番向き合うことになる問いです。

判断は、どの順番で手放すと現場が回るのか。

私は普段、PMとして案件を設計しています。ゴール設計、優先順位、体制整理。できるだけ全体像を見ているつもりです。

でも正直に言うと、「どこまで自分が持つべきか」で迷うことが多い。

今回は、私の会社の先輩であり、大規模案件の設計を長く担当してきた加藤さんに、企画趣旨を共有したうえで、オフの場で率直に話を聞かせてもらいました。

「私は、判断を持ちすぎていますか?」

出口:
いきなりですが。私は、判断を持ちすぎている気がしています。……というより、持っていないと落ち着かない、のかもしれません。

加藤:
どんなときにそう思う?

出口:
全部を把握していないと落ち着かないんです。自分が知らないところで何か決まっているのが、少し怖い。仕様も、UIも、技術構造も。一度は目を通さないと、不安になる。

加藤:
それで、何が起きてる?

出口:
レビューが多くなる。待ちが発生する。自分がボトルネックになっている感覚はあります。

加藤:
じゃあ質問。それは責任感? それとも不安?

出口:
……不安、ですね。

加藤:
不安は悪くない。俺も昔は、全部自分で決めていた。そのほうが安心だったから。でも、それで止まった案件もある。

PMが「持ち続ける」べき判断

出口:
私は、ゴールと優先順位は持っています。でも、その下の判断にもつい手を出してしまう。

加藤:
ゴールは、どう定義してる?

出口:
数値目標と、今回の案件で達成したい状態。たとえば「問い合わせ率改善」なら、一次導線の明確化を最優先、とか。

加藤:
そこまで言語化できてるなら、本来は下位判断は渡せるはず。

出口:
でも、デザインレビューで「なんとなく違う」と感じると止めてしまう。

加藤:
その「なんとなく」は、ゴールに接続してる?

出口:
……していないこともあります。

加藤:
それは持つべき判断じゃない。持ち続けるべきなのは、ゴールの定義と、優先順位。あとは体制の構造。それ以外は、“接続しているか”だけを見る。

判断を手放して、うまくいった経験

出口:
私は最近、小規模リニューアルでUI判断をデザイナーに大きく渡しました。

加藤:
怖くなかった?

出口:
怖かったです。でも今回は、「問い合わせ完了率を上げる」という一点に集中しました。導線の分かりやすさが最優先。ビジュアルの印象は二番目。

加藤:
その順番を共有した?

出口:
はい。デザインレビューでは「迷わない構造になっているか」だけを見ました。結果、修正回数が減りました。提案の質も上がった。

加藤:
それは、判断の順番を揃えたから。

出口:
正直、全部見なくても回るんだ、と実感しました。

手放して、失敗した話

出口:
一方で、失敗もあります。

加藤:
聞こう。

出口:
システム刷新案件で、「技術判断は任せる」と思っていました。でも、“運用しやすさを重視する”という抽象的なゴールしか共有していなかった。

結果、技術的には正しいが、オペレーションが複雑な設計になりました。

加藤:
ゴールが曖昧だった。

出口:
はい。私は「任せたつもり」でしたが、持つべき判断まで渡してしまっていた。

加藤:
止めた?

出口:
止めました。正直、Slackに「一度立ち止まりたい」と書くまで、10分くらい画面を見ていました。

加藤:
でも、その判断は正しい。

出口:
そのとき初めて、“任せる前に、順番を整理する必要がある”と気づきました。

出口:
システム刷新案件で、
「技術判断は任せる」と思っていました。

でも、
“運用しやすさを重視する”
という抽象的なゴールしか共有していなかった。

結果、技術的には正しいが、
オペレーションが複雑な設計になりました。

加藤:
ゴールが曖昧だった。

出口:
はい。
私は「任せたつもり」でしたが、
持つべき判断まで渡してしまっていた。

加藤:
止めた?

出口:
止めました。
正直、Slackに「一度立ち止まりたい」と書くまで、
10分くらい画面を見ていました。

加藤:
でも、その判断は正しい。

出口:
そのとき初めて、
“任せる前に、順番を整理する必要がある”
と気づきました。

判断の順番をどう設計するか

出口:
加藤さんは、判断の順番をどう設計していますか。

加藤:
まず、ゴールを定義する。次に、優先順位を決める。そして、専門判断を渡す。ただし、ゴールと優先順位に接続する部分だけは見る。

出口:
全部を把握するのではなく、“接続点”を見る。

加藤:
そう。判断を監視するのではなく、構造を監視する。

出口:
それなら、全部を知っていなくても回る。

加藤:
内容を把握するPMから、配置を設計するPMに変わる。

会社では聞きにくいこと

出口:
正直に言うと、「全部を知らないPM」と思われるのが怖いです。

加藤:
それは皆怖い。

出口:
でも、全部を見ていると回らない。

加藤:
だから、「全部見ないと回らない状態」を疑う。

出口:
状態。

加藤:
判断の地図が共有されていないだけかもしれない。

出口:
今日の対談で、私は少し軽くなりました。

加藤:
持つ勇気より、手放す順番を設計する勇気。

出口:
それを持てるかどうかですね。今日の話を聞きながら、私はずっと「持つか、手放すか」だと思っていました。でも、本当は「順番」だったんですね。

林 颯真のまとめ

この最終回をやろうと思った理由は、PMが疲れている原因を、“量”ではなく“配置”で考えたかったからです。

出口さんは、判断を持ちすぎている不安を言語化してくれました。加藤さんは、その不安を精神論で処理しなかった。

判断には階層がある。そして、順番がある。

整理すると、順番はこうなります。

  • ゴールを持つ
  • 優先順位を持つ
  • 専門判断を渡す
  • 接続点だけを見る

この順番が崩れると、任せても不安になるし、持ち続けても詰まる。

今回の企画を通して、「分ける」という問いは、最終的に「配置する」という問いに変わりました。

その判断は、今、誰の手にあるべきか。

それを設計できるPMが増えれば、現場はもっと軽く、もっと速く回る。

正直に言うと、僕自身も、全部見ていないと不安になるタイプです。だからこそ、このテーマをやりたかった。

この企画は、そのための整理でした。

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Not For Sale編集部スタッフ