年度末の現場で 先にやっておくべきこと

年度末は トラブル対応の優先順位を決めておく

年度末の空気って、独特です。
カレンダーはまだ数ページ残っているのに、現場の空気はもう「締め」に入っています。
予算の話。
契約更新の話。
評価の話。
そしてなぜか、普段は静かな案件まで少しざわつき始めます。

不思議なもので、年度末はトラブルが増えるわけではありません。
むしろ、もともとあった小さな問題が表に出やすくなります。
「それ、今?」みたいな相談が増える。
「来期までに整理したいんです」という一言が重なる。
誰も悪くないけれど、全体が少しだけ焦っています。

僕は毎年この時期になると、あることを決めます。
トラブル対応の優先順位を、先に決めておく。
これだけです。
派手なテクニックではありません。
でもこれをやるだけで、年度末の体力消耗はだいぶ変わります。

今日はその話をします。
面白い話をしているようで、実はちゃんと使える話です。

年度末は「全部大事」に見える

年度末は、すべてが緊急に見えます。
「今期中に片付けたい」。
「来期に持ち越したくない」。
「評価に響くかもしれない」。
この三拍子がそろうと、どんな小さな違和感も急に重大案件に見えてきます。

ある年、僕はそれをまともに受け止めました。
来る相談すべてに本気で向き合い、全部を同じテンションで処理しようとしました。
結果、三月後半に完全に息切れしました。
やっていることは正しい。
でも、体力が足りない。
そして何より、判断が鈍くなります。

そのとき気づきました。
年度末に必要なのは、処理能力ではなく、優先順位です。
全部をきれいに片付けようとすると、全部が中途半端になります。
だからこそ、先に線を引く必要があります。

先に決めておくと楽になる

僕がやっていることは単純です。
年度末に入りそうだなと思ったら、自分の中で三つの箱を作ります。

ひとつ目は「今期中に絶対止めない箱」です。
売上に直結しているもの。
契約更新に関わるもの。
公開スケジュールが確定しているもの。
ここは何があっても優先します。

ふたつ目は「整えておく箱」です。
緊急ではないけれど、来期に影響しそうなもの。
小さな仕様のズレ。
ドキュメントの更新。
関係者の認識合わせ。
これは時間が空いたときに少しずつ触ります。

みっつ目は「来期でいい箱」です。
気になるけど、今やらなくても大きな影響が出ないもの。
改善案。
理想の再設計。
完璧を目指す話。
ここは、あえて触らない勇気を持ちます。

この三つを、誰にも言わずに自分の中で決めておくだけで、だいぶ楽になります。
相談が来たときに、瞬時に箱に入れられる。
迷う時間が減る。
焦りに巻き込まれにくくなります。

トラブルは「優先順位を狂わせる」

年度末のトラブルが怖いのは、規模ではありません。
優先順位を狂わせることです。

例えば、軽微なデザイン崩れが見つかったとします。
普段なら翌営業日対応で十分です。
でも年度末になると、「今期中に直しておきたいですね」と言われる。
その瞬間、緊急度が一段上がったように感じます。

ここで大事なのは、緊急度と重要度を切り分けることです。
今直さないと売上に影響するのか。
契約に影響するのか。
それとも気持ちの問題なのか。
この問いを、頭の中で一回挟むだけでブレにくくなります。

僕は年度末ほど、言葉をゆっくり選びます。
「今期中に対応できる範囲で進めましょう」。
「優先度を整理してから動きましょう」。
こういう一言で、空気は少し落ち着きます。
焦りに引っ張られないための、小さなブレーキです。

まだ間に合う

もし今、年度末の気配を感じているなら、まだ間に合います。
今週中に、三つの箱を決めてください。
紙でもメモでもいいです。
自分の頭の中に置いておくだけでもいい。

全部を完璧に処理しなくていい。
優先順位だけ決めておく。
それだけで、相談の受け止め方が変わります。
判断が速くなります。
そして何より、余計な消耗が減ります。

年度末は忙しいです。
でも毎年必ず来ます。
だからこそ、毎年同じやり方で消耗する必要はありません。
優先順位を先に決めておく。
たったそれだけで、現場の体感は変わります。

年度末の現場って、どこかお祭りみたいです。
みんな少しテンションが高い。
少し焦っている。
でもその中で落ち着いている人がいると、全体が安定します。
その役目を、別に大げさに引き受ける必要はありません。
自分の中だけでもいい。
軸を決めておく。

年度末は、全部を頑張る時期ではありません。
何を頑張らないかを決める時期です。
それができれば、四月にちゃんと笑えます。

今からでも遅くありません。
三つの箱を作る。
トラブル対応の優先順位を決めておく。
それだけで、この先の数週間は少し楽になります。

面白い話をしているつもりが、ちゃんと使える話でした。
保存しておいても、損はないと思います。

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投稿者

西田 悠
西田 悠
元インハウスディレクター。制作現場で実際に走り回った経験をもとに、リアルな“現場視点”で記事を執筆。現場調整やクライアント対応、トラブル対応など、泥臭い部分も含めてディレクションの「本音」を語るのが持ち味。