年度末進行、だいたいここで詰まる

“なんか違う”が増えると、進行は止まる

年度末の進行は、だいたいここで詰まります。
大きな事故ではありません。
静かな停滞です。

「なんか違う気がします。」
「ちょっと違和感あります。」
「もう一段、良くなりそう。」

この言葉が増え始めたとき、プロジェクトはゆっくり止まります。

誰も怒っていない。
でも前に進まない。

年度末は忙しい。
判断は早い。
でも言葉が追いつかない。

今日は、この“なんか違う”の話をします。
あるあるで終わらせません。
読んだら、明日のレビューで一行変えたくなる話です。

「なんか違う」は便利すぎる

“なんか違う”は、角が立ちません。
否定しきらない。
でもOKも出さない。

だから便利です。

でも進行にとっては、霧みたいな存在です。
方向が見えなくなる。

よくあるやり取りです。

「なんか違う。」
「どのあたりですか?」
「全体的に…?」
「トーンですか?」
「うーん、なんか。」

ここで止まります。

修正は始まる。
でも正解がない。

年度末はこれが増えます。
疲れていると、違和感の正体まで考える余力が減るからです。

でもほとんどの場合、“なんか違う”には理由があります。

・目的に対して強すぎる。
・情報が多くて重たい。
・ブランドトーンから少しズレている。
・逆に、攻めきれていない。

違和感はある。
でも言語化されていない。

だから、進行が止まる。

クライアントから「なんか違う」を言われた日

年度末、実際にあった話です。

デザイン提出後、返ってきたコメントは一言でした。

「なんか違うんですよね」

具体はなし。
方向性の否定でもない。
でもOKではない。

この瞬間、やりがちな行動は二つです。

全部を疑って直す。
もしくは「どこが違いますか?」と返す。

どちらも間違いではありません。
でも、年末進行中だと時間が溶けます。

僕がやったのは、まず自分の中で翻訳することでした。

この案件のゴールは何か。

それは“安心して使い続けられる印象”でした。
売上最大化でも、派手な刷新でもない。

そこで僕は、こう返しました。

「安心感のトーンが、少しキャンペーン寄りに見えた、という違和感でしょうか?」

返事はすぐ来ました。

「そう、それです。少し攻めすぎている気がする。」

ここで、修正の方向が決まりました。

派手な変更はしていません。
強調のトーンを落とす。
コピーの語尾を柔らかくする。
写真の選び方を安定感重視に寄せる。

修正は小さい。
でも前提は大きく揃いました。

もしあのとき、
「どこが違いますか?」だけで返していたら、議論は長引いていたと思います。

“なんか違う”を、そのまま受け取らない。
でも否定もしない。

一度、自分でゴールに紐づける。

そして、一行で提案として返す。

「◯◯に対しての違和感という理解で合っていますか?」

これだけで、空気は変わります。

修正コメントは 一行で整えると動き出す

ここでやっていることは、翻訳です。

違和感 → 目的に接続 → 一行にする。

たとえば、

× なんか弱い。
○ ファーストビューでベネフィットが瞬時に伝わらない。

× 全体的に重たい。
○ 今回の目的(申込促進)に対して情報量が多い。

× らしくない。
○ ブランドトーンよりもキャンペーン感が強い。

ポイントは、“何に対して違うのか”を明確にすることです。

年度末はゴールがぼやけやすい。
だから違和感もぼやける。

一行にすると、修正は最短距離になります。
探りの修正が減ります。
レビューの往復が短くなります。

HOWTOとしては簡単です。
コメントを送る前に10秒だけ考える。

「これ、何に対して違う?」

その答えを一行にする。

それだけです。

“なんか違う”を翻訳できる現場は強い

“なんか違う”は敵ではありません。
センサーです。

問題は、霧のまま放置することです。

年度末進行はだいたいここで詰まります。
違和感が増える。
言語化が追いつかない。
修正が増える。
空気が重くなる。

でも、違和感を翻訳できる現場は強いです。

なぜなら、迷いが共有されるからです。
共有されれば、止まりません。

やることは派手ではありません。
一行です。

違和感を目的に紐づける。
そして言葉にする。

年度末は忙しい。
だからこそ、言葉を整える。

“なんか違う”が増えたら、それは停滞のサインです。
でも一行あれば、また動き出します。

前の記事 誰が決めるか、曖昧になっていませんか?
次の記事 リリース直前で気づく、あの違和感

投稿者

中村 海斗
中村 海斗
デザイナーからUXライターへ転身。構成と表現のバランス感覚に優れ、デザインの意図を“言葉”として翻訳することを得意とする。デザインとライティングの橋渡し役として、UIテキストや構成設計、トーン&マナーの整備を支援している。