Webディレクター、仕様変更を断る勇気がほしい

「ASAPでお願いします」が来たとき、だいたい何も言えない

Webディレクターをやっていると、たまに言葉が詰まる瞬間があります。

仕様変更の相談。
急ぎの依頼。
スケジュールがきついときの一言。

その中でも、地味に強いのがこれです。

「これ、ASAPでお願いします。」

意味はわかる。
言ってることもわかる。
でも、なんか返せない。

「あ、はい…」って言ってしまう。
そして後で後悔する。

今日は、この“言えない感じ”の正体と、どうしたらいいかの話です。

若手のころ、ASAPは断れない呪文だった

僕がディレクターになりたてのころ、ASAPはほぼ無敵でした。

クライアントに言われる。
上司に言われる。
エンジニアからも言われる。

「これ、ASAPでお願いします。」

そのたびに思っていました。

「急ぎなんやな…やらなあかんやつやな…」

で、受ける。

その結果どうなるかというと、だいたいこうです。

・本来のタスクが後ろにずれる
・他のメンバーにしわ寄せがいく
・自分の作業時間がなくなる

でも、その場では言えない。

なぜかというと、「急ぎを断る=悪いこと」だと思っていたからです。

あと、もう一つ理由があります。

どれくらい急ぎか、わかっていない。

現場ではこうズレる

ASAPが怖いのは、「急ぎ」という空気だけが残るところです。

期限はない。
優先順位も曖昧。
でも急ぎ感だけはある。

ディレクターはここで板挟みになります。

上からは急ぎと言われる。
下にはタスクがある。

どれを優先するか決めないといけない。

でも、情報が足りない。

結果どうなるか。

全部やろうとする。

そして燃える。

僕が巻き取りに入った案件でも、だいたいこのパターンがありました。

ASAPのタスクが3つ。
全部急ぎ。
でも期限なし。

誰も整理していない。

結果、全部中途半端。

こういうとき、現場は静かに崩れていきます。

「なる早」と「ASAP」、どっちが強いのか問題

これ、現場で一回は悩みます。

うちの会社のベテラン勢から言われるやつ。

「これ、なる早で頼むわ。」

で、同じタイミングでクライアントから来る。

「こちら、ASAPでお願いします。」

どっち優先したらええねん。

言葉だけ見たら、どっちも同じです。
急ぎ。

でも、現場にいるとなんとなく感じます。

なる早は、まだ相談できる空気がある。
ASAPは、ちょっとだけ圧がある。

だから若手のころは、ASAPを優先しがちです。

「英語やし、なんかちゃんと急ぎっぽいし。」

わかります。
僕もそうでした。

でも、何回か現場を回していくと気づきます。

どっちも、言葉の強さはあんまり関係ない。

重要なのは中身です。

・どのタスクと関係しているか
・後続に影響があるか
・止まると誰が困るか

これで優先順位は決まる。

実際にあった話です。

社内から「なる早」で来た修正が、公開直前の導線に関わるものでした。
一方でクライアントからのASAPは、テキストの微調整。

この場合、どう考えても「なる早」のほうが先です。

でも言葉だけで判断すると、逆にしがち。

だから僕は、ASAPって言われたとき、こう思うようにしています。

「はいはい急ぎね。で、中身は?」

ちょっと雑に聞こえるかもしれませんが、このくらいの距離感のほうが安全です。

ASAPをどう扱うかで、ディレクターの腕が出る

今の僕は、ASAPをそのまま受けません。

まずやることはシンプルです。

翻訳する。

ASAPを、そのままの言葉で受けない。

たとえばこう返します。

「最短でいつまでの対応が必要でしょうか?」
「他タスクとの優先順位を教えていただけますか?」

これだけです。

強くない。
でも、ちゃんと聞いている。

ポイントは、“断る”ではなく“解像度を上げる”ことです。

ASAPを具体にする。

そうすると、だいたいこうなります。

・本当に急ぎ
・そこまで急ぎじゃない
・実は急ぎじゃない

だいたい3つに分かれます。

そして3つ目、意外と多いです。

略語としてのASAPの使い方と誤解

ここで一度整理します。

ASAPは、あくまで目安の表現です。

期限ではない。
指示でもない。

でも現場では、指示っぽく使われることが多い。

ここが誤解ポイントです。

正しい使いどころは、たとえばこうです。

・状況共有
「可能であればASAPで対応いただけると助かります。」

これはお願いです。
強制ではない。

一方で、ディレクションではこう使うほうがいい。

・期限を出す
「本日中に対応お願いします。」
「明日午前までに確認ください。」

こちらのほうが、圧倒的に安全です。

ディレクターは、曖昧さを減らす仕事です。

だからこそ、ASAPをそのまま使うより、具体にしたほうがいい。

今日からどうする?

じゃあ、どうすればいいのか。

答えはシンプルです。

ASAPを見たら、一回聞く。

それだけです。

・「いつまでですか?」
・「優先度どれくらいですか?」
・「他のタスクより優先ですか?」

この一言で、だいぶ変わります。

僕も昔は、「ASAPで」と言われたらそのまま受けていました。
なんとなく断りにくかった。

でも今は、少しだけ間を置きます。

「了解です。いつまでの対応が必要か教えてください。」

これだけで、現場が落ち着きます。

ディレクターって、全部を引き受ける仕事ではありません。

整理する仕事です。

ASAPって、便利な言葉です。
でも、そのまま受けると、だいたいしんどくなる。

だから、一回だけ立ち止まる。

「で、いつやねん。」

心の中でそうツッコミながら、
少しだけ聞き返す。

それくらいで、ちょうどいいです。

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投稿者

西田 悠
西田 悠
元インハウスディレクター。制作現場で実際に走り回った経験をもとに、リアルな“現場視点”で記事を執筆。現場調整やクライアント対応、トラブル対応など、泥臭い部分も含めてディレクションの「本音」を語るのが持ち味。