Webディレクター、仕様変更を断る勇気がほしい

その一文、本当に今入れます?と止めたい夜

夜です。
だいたい21時以降です。

ディレクターの一日が終わりそうな時間に、Slackが鳴ります。

「ここに一文追加したいです。」

出ました。
夜の一文追加。

しかもだいたい、こう続きます。

「軽微なので即時対応お願いします。」

軽微。
この言葉、現場ではあまり軽くありません。

若手のころの僕は、これをそのまま受け取っていました。
一文ならすぐ終わるだろうと思っていたんです。

でも実際は違います。

一文入れるだけのはずが、
レイアウトが崩れて、余白がズレて、デザインが揺れます。

気づくとこうなります。

「やっぱり全体ちょっと調整しますね。」

一文のはずが、ページ全体になります。

あのころの僕は、これを止められませんでした。

「一文だけ」の破壊力を知らなかった

若手のころは、本当に思っていました。
一文追加するだけでしょ、と。

でも現場に出てしばらくすると分かります。

一文は一文じゃない。

例えばファーストビューにコピーを1行追加するだけで、折り返しが変わります。
それに引っ張られて、画像とのバランスが崩れ、ボタンの位置がズレます。

デザインは意外と繊細です。
一箇所を触ると、全体に波及します。

さらに怖いのは連鎖です。

「この下も詰まって見えますね。」
「ここも少し直したいです。」

こうやって修正が広がっていきます。

でも依頼はずっと「一文追加」です。

このギャップに気づけるかどうかで、ディレクターの消耗はかなり変わります。

仕様と「なんとなく」を分ける

ここで一度整理します。

ディレクターがよく使う言葉でいうと、これは仕様かどうかの話です。

仕様というのは、「こう作ると決めた内容」です。

テキストはここに入る。
ボタンはここに置く。
この文言で公開する。

これが仕様です。

一方で夜に飛んでくる一文は、だいたいこうです。

「なんか足りない気がする」
「やっぱりこれも言っておきたい」

気持ちはすごく分かります。
むしろ、その感覚があるから良いものができます。

でもそれは仕様ではありません。

つまりこういうことです。

変えてもいい余地がある。

ここを切り分けられるようになると、ディレクターは少し楽になります。

なぜ夜に「その一文」は生まれるのか

ここまで「やめてほしい側」の話をしてきました。
でも一回だけ、視点を逆にしてみます。

夜に飛んでくる「一文追加」。
あれ、突然降ってきているように見えます。

でも実際は、だいたい一日がかりで温められています。

昼の会議で少し引っかかる。
「これ、ちょっと伝わりづらいかもね」と誰かが言う。

その場では流れます。
スケジュールもあるし、深掘りはしません。

でもその違和感、消えていません。

移動中に思い出します。
夜ご飯のあとにも思い出します。
なんならお風呂でも思い出します。

そしてこうなります。

「やっぱりあの一文、入れた方がいい気がする」

で、Slackが飛んできます。

つまりあの一文は、
突発ではなく熟成された違和感です。

これが分かると、見え方が少し変わります。

ただの思いつきではない。
でも仕様でもない。

この間にあるものです。

だからディレクターとしては、こう考えます。

「その違和感、どこまで影響します?」

ここを一緒に整理する。

これができると、ただ断るだけじゃなくて、
ちゃんと交通整理ができるディレクターになります。

現場で起きていること

こういう背景がある中で、現場では何が起きているかというとシンプルです。

スケジュールは進んでいます。
リリースは近いです。

その中で一文が追加されます。

このときディレクターの頭の中では、いくつかの確認が同時に走ります。

どこに影響するか。
どこまで広がるか。
今やるべきか。

そして心の中では、こう思っています。

「それ、今やります?」

でも若手のころは、なかなか言えません。

言ったら空気が悪くなるかもしれない。
嫌われるかもしれない。

だから受けてしまう。

そして夜が長くなります。

このループ、かなりの確率で通ります。

じゃあ、どうする?

ここからがディレクターの仕事です。

止めるか、受けるか。

どちらかを選ぶ必要があります。

ポイントはシンプルです。

リスクをゼロにするのではなく、理解して選ぶ。

一文追加で何が起きるか。
どこまで影響するか。

これを一度言葉にします。

例えばこうです。

「ここに一文追加すると、全体のレイアウトも調整が必要になりますが大丈夫ですか?」

これだけで状況が変わります。

相手も考えます。
「そこまで影響あるんだ」と気づきます。

その上で、やるかやらないかを決める。

ここで初めて、ディレクターの判断になります。

不安だったら、先輩や上司に相談してみるのもいいです。

一人で全部の責任を背負わなくていい。
むしろ背負おうとすると、判断が鈍ります。

上司や先輩のナレッジを、言い方は悪いですが有効活用するのも仕事のうちです。

「これ、広がりますかね?」と一言聞くだけで視野は広がります。

経験値は借りていいんです。

「その一文」を止められるようになると

ディレクターを続けていると、だんだん分かってきます。

止めるべき一文と、受けるべき一文。

全部断るのが正解ではありません。
全部受けるのも違います。

大事なのは、理由を持って判断することです。

その一文は本当に必要か。
今やるべきか。

それを考えた上で、こう言えるようになります。

「その一文、本当に今入れます?」

この一言が言えるようになると、夜が少し短くなります。

そして現場が少し整います。

Webディレクター、だいたいこういうところで戦っています。

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投稿者

村上 駿
村上 駿
SNSマーケティング会社出身。SNSとオウンドメディアを組み合わせた連携企画で多数の実績を持つ。トレンド分析を得意とし、バズよりも“共感を生む”発信戦略をテーマに活動中。SNS運用担当とWebディレクターの橋渡し役として、現場のリアルな課題を発信している。