「いい感じでお願いします。」
あー、出ましたね。”いい感じ”。
この言葉、便利すぎるんですよ。ふんわりしてて、角も立たないし、なんとなく合意した気になれる。しかも厄介なことに、その場ではだいたいうまくいった感じになる。
「はい、いい感じでいきます!」「いい感じですね!」「いい感じになってきました!」
会議、終了。
……で、1週間後。
「なんか違うんですよね。」
まあ、そうなりますよね。
目次
あるある:「いい感じ」で合意して、あとで全員迷子
若手の頃、これやりました。ワイヤーを出して、デザインが上がって、レビューして。「いい感じですね!」この一言で、全部進んだ気になる。
でもこの「いい感じ」、誰の”いい感じ”なのか、誰も確認してないんですよ。
・余白がいい感じ
・トーンがいい感じ
・なんか今っぽくていい感じ
全部、ふわっとしてる。で、どんどん進む。実装まで進む。リリース直前まで進む。
そして戻ってくる。
「なんか違うんですよね。」
そこでやっと気づく。あのときの”いい感じ”、誰も定義してなかったなって。
若手の頃、「センスで乗り切るゲーム」だと思っていた
当時の僕は思ってました。”いい感じ”を作れる人が強い。センスの勝負だと。
だからやることはシンプルで、流行に寄せて、それっぽく整える。
でもこれ、だいたい外れます。なぜかというと、”いい感じ”ってセンスじゃなくて、意図のすり合わせができてる状態のことだから。
信頼感を出したいのか、スピード感を出したいのか、親しみやすさを出したいのか。
ここが違えば、”いい感じ”の方向も全部変わる。
でも若手の頃はそこを飛ばす。
なんとなくで作って、なんとなくでOKが出て、なんとなくでズレる。
そして、ちゃんと迷子になる。
現場で起きてる「いい感じのズレ」
今の現場でも、普通に起きます。
「もうちょっといい感じにできます?」
「なんか違うんですよね、いい感じじゃないというか」
これ、翻訳するとこうです。
「自分の中には正解あるけど、まだ言葉になってないです。」
つまり、”いい感じ”は途中の言葉なんです。
行き先はある地図なんだけど、肝心の目的地が書いてない、みたいな。
そこから作業が始まってしまってる。
ここで止まるとどうなるか。
作る側は推測ゲームに入るし、レビュー側は違和感を持ち続ける。で、修正が増える。
一番よくあるのがこれです。
「もう少し洗練できます?」
→ 余白を増やす
→ 「うーん、違う」。
そりゃそうなんですよ。
“洗練”って何か、誰も定義してないから。でも会話としては成立してしまう。これが怖い。
“いい感じ”って言った瞬間、ちょっとだけわかったふりしてる
これ、ちょっとだけ耳が痛い話です。
「いい感じですね」って言ったとき、実はちゃんと分かってないこと、ありませんか。
僕はありました。余白がいいのか、配色がいいのか、トーンが合ってるのか。正直、全部は分かってない。でも場の流れ的に「いい感じですね」って言う。
これ、めちゃくちゃ自然な行動ですよね。会議もスムーズに進むし、空気も悪くならない。
ただ、ひとつだけ問題がある。“わかったこと”として進んでしまう。
本当はまだ途中なのに、理解した前提で話が進む。だから後から崩れます。「なんか違うんですよね。」最初からちゃんと分かってなかったから、そりゃそうです。
わかったふりをやめると、ちょっとだけ面倒で、でも楽になる
じゃあどうするか。シンプルです。
「いい感じ」を一回止める。
「いい感じですね」の代わりに「どのあたりが良いと感じましたか?」って聞く。
最初はちょっとだけ気まずいんですよ。
流れ止まるし、「細かいな」って思われるかもしれないし。
でもここで一段止めると、ちゃんと揃います。
余白の話だったのか、トーンの話だったのか、情報の順番の話だったのか。
一度揃うと、その後はめちゃくちゃ楽になります。
修正が減るし、迷いも減るし、「なんか違う」も減る。
ちょっと面倒を先にやると、後が楽になる。
わかったふりをやめるって、そういうことです。
まとめ
「なんかいい感じ」は、悪い言葉じゃないです。
ただ、途中の言葉です。
そこに甘えると、あとで全部返ってくる。
「なんか違う」で戻ってくる。
一歩だけ進める。「どこが?」を足す。
「なぜ?」をつける。
それだけで、迷子にならなくなります。
そしてたぶん途中で気づきます。
ディレクターの仕事って、“いい感じ”にちゃんと名前をつける仕事なんだなって。

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