仕様決めMTGって、なんであんなに重いんでしょうか。
カレンダーに「仕様決め 13:00〜」って入ってるだけで、なんとなく午前中のテンションが下がる。なんですかね、あれ。
で、始まってみるとこうなる。発言する人が固定される。「それ技術的に難しいです」で一個ずつアイデアが死んでいく。30分経っても結論が出ない。誰かが「ちょっと整理しましょうか」と言い出す。そして誰かが「最初に戻りますが」と言い出す。
全部あるあるすぎて笑えないんですけど、ここに一個気づきがあって。
重いのは中身じゃなくて、名前かもしれない。
目次
若手の頃、仕様決めMTGが苦手だった
仕様決めって言葉、便利なんですよ。でも若手のころ、あの場がずっと苦手でした。
何が苦手かって、発言のコストが高いんですよね。「仕様を決める」という場なので、発言したら責任を持たないといけない気がする。間違えたらいけない気がする。だから黙る。考えてるふりをする。メモを取るふりをする。
結果として、発言する人が固定されてくる。声が大きい人、立場が上の人、詳しい人。それ以外は「ふむ」「なるほど」要員になる。
これ、仕様決めMTGあるあるだと思うんですけど、問題はここからで。その「なるほど要員」の人たちが、一番現場での実装を知ってたりする。エンジニアのAさんが「あ、実はこういう方法なら全然いけますよ」という情報を持ってる。でも言い出すタイミングがない。場の空気がない。
仕様決めという「重さ」が、情報を詰まらせてる。
「場の名前」を変えたら、発言が変わった話
ある案件で試してみたことがあります。仕様決めMTGを、「発明大会」と呼んでみた。
それだけです。Zoomの招待文に「今日は発明大会やります」と書いた。カレンダーのタイトルも変えた。
会議室に入ってきたデザイナーのBさんが「発明大会ってなんですか」って聞いてきた。「みんなで一番面白い方法を考える会です」と答えた。
Bさんの顔が、ちょっとだけ変わった。
この「ちょっとだけ変わった顔」、実はすごく大事だと思ってて。「仕様決め」という言葉が持つ「正解を決める場」という重さが、「発明大会」にした瞬間に「面白いことを考える場」に変わる。参加者のスタンスが、審査員から発明家になる。
同じ人が、同じ部屋に集まって、同じ議題を話す。でも場の名前が違うだけで、発言が変わる。これ、体験してみると結構ちゃんと変わるんですよ。
ファシリテーションって何か、ちゃんと整理する
ここで一個、言葉を整理しておきます。
ファシリテーション(facilitation)とは、会議や場の進行を「助ける」行為のことです。その役を担う人をファシリテーターと呼びます。
よく「司会と同じでしょ」と思われがちなんですが、ちょっと違います。司会は進行をコントロールする役割で、「次の議題に移ります」「時間です」みたいなやつ。ファシリテーターは、参加者の思考を引き出す役割で、「それってもう少し聞かせてもらえますか」「それとこっちのアイデア、組み合わせたらどうなりますか」みたいな問いかけをする人です。
誤解されがちなのが、「ファシリテーターは仕切る人」というイメージ。でも実際は逆で、自分が仕切るんじゃなくて、他の人が動きやすくなる場を作る人です。ファシリテーターが目立つほど失敗に近い、くらいに思っておいた方がいい。
使いどころとしては、仕様決め・ブレスト・振り返り系の会議が典型です。「正解がない」「複数の意見を集めたい」「結論が一人に寄りがち」という場に効きます。
仕様決めMTGが重くなりがちなのは、ファシリテーターがいないか、いても司会的な動きしかしていないことが多いからで、「発明大会」という名前に変えることで、自然とファシリテーションが機能しやすくなります。正解を決めないといけないプレッシャーが下がるから、思考を引き出しやすくなる。
現場でやってること、具体的に書きます
「発明大会」を機能させるために、実際にやっていることをまとめます。
① 最初に「縛り」を提示する
「今回の縛りはこれです」とゲームのルールみたいに最初に出す。「予算が少ない」は重い制約ですが、「今回は低予算縛りです」にするとなんか工夫の余地が生まれる感じがする。同じ内容なのに言葉の重さって本当に変わります。
縛りを出すのは制限を宣言するためじゃなくて、「その縛りの中でどこまで面白くできるか」という遊びに変換するためです。
② 「正解がない」と宣言する
「今日は正解を決める場じゃなくて、面白いアイデアを出す場です」と最初に言う。これだけで発言のハードルが下がります。「でも最終的には決めなきゃいけない」という気持ちは分かるんですけど、決めるのは会議の最後に5分あればできる。それよりも前半はアイデアを広げる場にした方が、結論の質が上がることが多いです。
③ エンジニアやデザイナーを「発明家」として扱う
「技術的にどう実装するか」という問いより、「この条件でできる一番面白いやり方、何かありますか」という問いの方が回答が広がります。前者だと「できる・できない」の二択に近くなる。後者だと「こういうアプローチはどうでしょう」が出てきやすい。
これ、言い回しの話だけじゃなくて、相手への敬意の話でもあって。「技術者に制約の中でどうするか答えてもらう」じゃなくて、「技術者に面白い方法を発明してもらう」という扱いの違いが、返ってくる言葉の質を変えます。
④ 出たアイデアを「実装難易度×面白さ」でマッピングする
ホワイトボードか共有スライドに2軸を作る。縦軸が「実装難易度(高い/低い)」、横軸が「ユーザーへの面白さ(高い/低い)」。
これ、ゲームっぽくなるので場が動きやすい。「このアイデアって、難易度低くて面白さ高い位置に入りません?」と言いやすくなる。「難易度が高い」と言いにくかったエンジニアも、マッピングというゲームの中ならポジションを動かしやすくなります。
「伝え方」が場をつくる
ここまで書いてきて、結局何が大事かというと、ファシリテーションって「何を言うか」じゃなくて「どう言うか」なんですよね。
同じ内容でも、言い方で場が変わる。
「仕様を決めましょう」→「どの方法が一番面白いか考えましょう」。「制約があります」→「今回の縛りはこれです」。「なぜそう思いますか」→「それ、もう少し聞かせてもらえますか」。
言ってることはほぼ同じだったりするんですけど、受け取られ方が全然違う。重さが変わる。
これ、センスじゃなくて技術だと思っていて。練習すればうまくなれるやつです。「発明大会」と呼ぶのも、縛りと言うのも、最初は照れくさいんですよ。でも一回やってみると、場の反応が変わるのが分かる。それを繰り返すだけです。
明日のMTGで試せること
一個だけ持って帰るとしたら、これです。
次の仕様決めMTGの招待文に「発明大会」と書いてみる。
「怪しくないですか?」と思うかもしれないんですが、これだけで場のスタンスが変わります。参加者が「あれ、今日ちょっと違うかも」と思って会議室に来る。それだけでも違う。
ファシリテーションって、最初からうまくやろうとしなくていいです。一個試して、一個観察して、少しずつ変えていく。発明大会を開くのは、自分自身でもあります。
仕様決めMTGが地獄なのは、中身が難しいからじゃない。場の作り方が変わっていないだけです。だったら、名前から変えてみる。それだけでちょっと変わります。

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