年末が近づくと、どの制作現場も不思議なほど同じ景色になります。
案件は走り続け、更新依頼は積み上がり、修正は同時多発し、
「どれから手を付ければいいのか分からない」
という空気が漂い始めます。
特にUI修正は、年末進行の“渋滞ポイント”になりがちです。
細かな要望が重なり、優先度が見えづらくなり、
気づけば修正案だけが増えていく。
そんな経験、1〜3年目なら何度もあるはずです。
けれど、この時期にこそ大切なのは、
“UIを見る前に、意図の交通整理をすること” です。
年末は、作業量ではなく“意図の数”が増える時期。
つまり、意図を素早く整えられる若手は、
この時期に一気に存在感が増します。
今回の第21回は、15〜20回で積み上げてきた
「未経験→段取り→質→役割」の総復習として、
意図の交通整理を軸に年末進行を乗り切る方法 をまとめます。
目次
UIを見る前に“意図の交通整理”をするための年末進行術
1. 修正案を並べる前に、「意図の種類」を分類する
修正が渋滞する原因の大半は、
“UI案が多すぎる”ことではなく、“意図の分類がされていない”こと にあります。
年末の修正依頼には、さまざまな意図が混ざっています。
- ユーザーの迷いを減らしたい意図
- コンバージョンを増やしたい意図
- ブランドの表現を揃えたい意図
- 要件として情報を盛り込みたい意図
- 現場のミスを防止したい意図
これらが一つの画面に同時に寄せられると、
UIは必ず崩れます。
“渋滞”とは、意図同士が競合している状態です。
だからこそ、UIを見る前にすべきは、
意図を種類ごとに分類すること です。
僕はよく、メモ帳に5つの器を作ります。
・体験の意図(UX)
・目的達成の意図(CV/導線)
・要件の意図(機能)
・ブランドの意図(印象)
・運用の意図(作業性/ミス防止)
修正依頼をひとつずつ、この器に落とし込んでいくと、
どの意図が強く、どこに齟齬があるのかが見え始めます。
画面の違和感は、
UIではなく意図の“混線”から生まれていることが多いのです。
2. 意図に優先度をつけると、一気に判断が早くなる
意図を分類したら、次に必要なのは
「優先度の整理」 です。
年末は、全ての意図を同時に叶える余裕はありません。
むしろ、
“どれを先に叶えるか”を決めることこそ、段取りの総仕上げ です。
優先度を判断する基準は、この3つ。
- 事業的な優先度(何を最も達成したいか)
- ユーザーが迷わないための最小限の構造
- 変更コストの低さ(今直せる範囲はどこか)
たとえば、
「ブランド観点の修正」よりも
「迷いを減らす導線調整」のほうが優先されることは多いです。
優先度が見えると、
UIのどこから触るべきかが自然に決まります。
これは1〜3年目の若手が、
“作業者”から“判断できる人”へ変わるときの大きな転機です。
3. UIを直す前に、構造の“守るべき骨格”を一行で書き出す
意図を分類し終えたあとにすることは、
“この画面の構造で絶対に守りたいものを一行で書く” ことです。
例:
- 「初回ユーザーが次の行動を迷わない構造を維持する」
- 「会員登録までの距離を最短に保つ」
- 「途中離脱を生みやすい判断点を増やさない」
この“骨格の一行”があるだけで、
UIの細部を直す時に判断がぶれません。
意図の整理とは、
“何をやらないか”を決める作業でもあります。
年末は特に、
「修正が増えるのに時間は減る」
という矛盾した季節です。
だからこそ“骨格の一行”が
判断スピードを一気に加速させます。
4. 修正依頼の文章は「意図 → 理由 → 提案」の順で整える
年末のレビューで最も混線しやすいのが、
修正依頼の文章の順番 です。
修正案を先に伝えてしまうと、
相手は“作業指示”として受け取ってしまう。
だからこそ、
意図 → 理由 → 提案
の順で伝えることが年末ほど効いてきます。
例:
「今回は“初回ユーザーの迷いをなくす”意図があります。
その理由として、現状では情報の出方が早く判断が難しいため、
構造を保ったままテキストを段階化したいと考えています。
そのうえで、ここのブロックを入れ替えるのはどうでしょうか?」
この順番に整えるだけで、
デザイナーもPMも「理解できる・判断できる・動ける」状態になります。
年末進行は、
相手が“動きやすい言葉”をかけられる人が強い 時期です。
5. 修正量が増えたときほど、“構造は最後に触る”
年末は細部の指摘が増えます。
ボタンの色、位置ズレ、余白の違和感…。
しかし、これらの修正は
構造や意図の整理が終わった後に触るのが鉄則です。
なぜなら、意図の優先度が変わると、
UIの重心は簡単に変わるからです。
若手が年末進行で疲弊しやすいのは、
細部の修正に先に手を出してしまい、
結果として再修正が増えてしまうから。
構造は“仕上げ”に触る。
この段取りができるだけで、
年末の修正渋滞は大幅に軽減できます。
“修正が終わらない年末”を救ってくれた、意図の整理メモ
僕が3年目の年末に担当した案件は、
まさに“修正の渋滞”そのものでした。
- クライアントからの追加要望
- PMからの要件変更
- デザイナーからの構造提案
- 運用側からの改善依頼
全てが同じ週に重なり、
Figma上には修正コメントが雪のように積もっていきました。
当時の僕は、
「全部対応しよう」と息巻いていました。
でも、作業を始めても終わりません。
直せば直すほど、新しい問題が出てくる。
その時、ふと
「そもそも、何の意図が重なってるんだろう?」
と立ち止まり、修正コメントを分類してみました。
すると驚くほど整理が進んだのです。
- UX上の意図:迷わない導線
- プロダクトの意図:CVを上げたい
- 要件の意図:説明を入れたい
- 運用の意図:ミスを防ぎたい
この4つの意図がひとつの画面に詰め込まれていました。
それまで僕は、
“UIの問題”として捉えていた。
でも違いました。
渋滞の正体は 意図の混線だったのです。
そこから、最優先の意図を決めました。
「まず、導線を崩さず迷いを減らすこと」
その“一行”を軸に、
UIの提案を再整理しました。
翌週のレビューで、
PMとデザイナーが口を揃えて言いました。
「この整理、助かる。」
「判断がしやすい。」
僕はその瞬間初めて、
“意図の整理がチームの速度を上げる”
という実感を得ました。
年末になると、
作業量の多さに気を取られがちです。
でも本当に混乱の原因になっていたのは、
作業ではなく 意図の渋滞 でした。
それ以来、僕は
UIを見る前に“一行の意図地図”を書く習慣を続けています。
年末のあの混乱を越えた時、
デザインを見る視野が少し広くなった気がしました。
作業者としてではなく、
意図を整理してチームを動かす人としての感覚が芽生えたのです。

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