入社前に 先輩からひとつだけ

最初は ちゃんと疲れる

入社前の人に、先輩としてひとつだけ伝えるなら、「最初は、ちゃんと疲れる」という話になると思う。
これは気合の話でも、根性論でもない。
仕事に向いているかどうかの判断材料でもない。

入社してしばらくの間は、仕事量以上に、頭と神経を使う時間が続く。
それが積み重なることで、想像以上に消耗する。

事前に仕事内容を聞いていても、研修や説明を受けていても、実際に現場に入ると、疲れ方は想像と違う。
この回は、「最初は疲れる」という事実を、理由と構造を含めて説明するための記事だ。

無理に前向きにならなくていい。
読んだあとに、「そういうものなら、まあいいか」と思えれば、それで十分だ。

最初の疲れは、作業量より判断の多さから来る

入社直後に感じる疲れは、単純に仕事量が多いからではない。
むしろ、一日の作業だけを切り取れば、ベテランより少ない場合のほうが多い。

それでも疲れる理由は、一つ一つの行動に判断が必要になる状態が続くからだ。
この作業は今やっていいのか。
どこまで自分で決めていいのか。
確認は必要か、それとも様子を見るべきか。
今聞くと、相手の手を止めてしまわないか。

経験がない状態では、こうした判断を毎回その場で考えることになる。
慣れている人は無意識に処理していることも、新人のうちは、すべて意識的に行う。

その結果、作業が終わるころには、体より先に頭が疲れている。
これは能力不足ではない。
経験がない立場に立った人なら、誰でも起きる状態だ。

慣れは、急には来ないが確実に進む

この疲れは、ずっと同じ形で続くわけではない。
ある日突然、楽になることはない。
ただ、少しずつ負荷が減っていく。

昨日は迷った判断を、今日は迷わずできる。
前は毎回確認していたことを、今日は自分で進められる。
会話の前提が、少しずつ読めるようになる。

そうやって、考えなくていい判断が増えていく。
疲れが完全になくなるわけではない。
忙しい日は、今後も疲れる。

ただ、理由の分からない消耗は減っていく。
最初の疲れは、「向いていないサイン」ではない。
まだ慣れていない状態にいるだけだ。

コラム|毎日くたくたになっていた理由を、あとから整理してみる

自分が現場に入ったばかりの頃は、一日が終わると、ほとんど何も残らなかった。
大きな失敗をした記憶はない。
強く怒られた日ばかりでもない。
それでも、帰るころにはかなり消耗していた。

当時は、その理由をうまく説明できなかった。
何がそんなに大変だったのかと聞かれても、具体的に答えられなかったと思う。

今振り返ると、一番消耗していたのは、分からない状態で動き続けていたことだった。
やるべきことは目の前にある。
でも、そのやり方が正しいかどうか分からない。
優先順位も、自分で判断していいのか分からない。

誰かに聞けば解決しそうでも、その「誰か」と「タイミング」が分からない。
結果として、一つの作業を進めるのに、必要以上に神経を使っていた。

当時は、「早く慣れなければいけない」「もっと要領よく動かなければいけない」と考えていた。
でも、今なら違う説明ができる。

あの疲れは、仕事ができないからではない。
怠けていたからでもない。
情報が少ない立場で、現場に適応しようとしていた疲れだった。

この状態は、本人の努力だけで早く終わらせることはできない。
時間をかけて、少しずつ判断材料が増えることでしか解消されない。

もし今、一日が終わると何もしたくなくなるなら、それは異常ではない。
現場に入ったばかりなら、そうなる要素が揃っているだけだ。

数か月後、同じ仕事をしていても、今ほど消耗しなくなっている可能性は高い。
その変化は、成長実感としては感じにくい。
ただ、疲れ方が変わることで、後から気づく。

最初の時期は、「ちゃんと疲れる」くらいでちょうどいい。
それ以上の意味を、今の段階で無理に見つけなくていい。

入社前の人に、先輩としてひとつだけ言うなら

入社前に、「疲れない働き方」を身につける必要はない。
最初からうまくやろうと構える必要もない。

知っておいてほしいのは、最初は疲れる構造の中に入るということだけだ。
それを知っていれば、疲れたときに、理由を自分の中で整理できる。

今日はダメだった、ではなく、今日は情報が多かった、今日は判断が多かった。
そう言い換えられる。

そうやって受け止められれば、無理に自分を追い込まずに済む。
入社前に整える準備としては、それで十分だと思う。

まとめ

最初は、ちゃんと疲れる。
それは避けられない。

でも、その疲れは、ずっと同じ形で続くものではない。
今は、慣れていく途中にいるだけだ。

そう理解できれば、今日一日を過剰に評価しなくて済む。
仕事が始まったばかりの時期は、それくらいの距離感でいい。

まあ、いっか。
今日はそう思って帰ればいい。

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投稿者

西田 悠
西田 悠
元インハウスディレクター。制作現場で実際に走り回った経験をもとに、リアルな“現場視点”で記事を執筆。現場調整やクライアント対応、トラブル対応など、泥臭い部分も含めてディレクションの「本音」を語るのが持ち味。