新人の頃 知りたかった社会人の悩み方

事務作業が 苦手だと気づいたときの話

新人の頃、事務作業が苦手だと気づく瞬間は、だいたい静かにやってきます。
怒られたわけでも、失敗したわけでもないのに、なんとなく「あ、これ、得意じゃないな」と思う瞬間です。

仕事そのものは嫌いじゃない。
人と話すのも嫌いじゃない。
企画の相談や、要件を整理する時間もわりと楽しい。
なのに、議事録をまとめるとか、数字を転記するとか、進行表を整えるとか、そういう「事務作業っぽい時間」になると、急に集中力が落ちる。
一個ずつやればいいだけなのに、なぜか全体が重たく見えてしまう。

最初は気のせいだと思います。
慣れていないだけ。
新人だから遅いだけ。
そのうち早くなるはず。
そうやって自分を納得させようとする。

でも、しばらくすると分かってきます。
慣れの問題じゃないな、ということが。

苦手だと認めにくい、という問題

僕の場合、同じフォーマットに数字を揃える作業とか、抜け漏れがないかを何度も確認する作業が、びっくりするほど消耗しました。
一回で終わらせたいのに、終わらない。
確認したはずなのに、また見直している。
気づいたら、周りより時間がかかっている。

そのときに浮かんだのが、「自分、仕事向いてないのかも」という、わりと極端な考えでした。
今思えば飛躍しすぎなんですが、新人の頃はこの飛躍を普通にやります。

事務作業が苦手。
イコール、仕事ができない。
イコール、社会人に向いていない。
この三段跳びが、頭の中で一瞬で成立する。

しかも厄介なのが、事務作業って「苦手です」と言いにくいところです。
企画が苦手とか、営業が苦手とかならまだ分かりやすい。
でも事務作業って、仕事の基礎みたいな顔をしている。
それを苦手と言うのは、基礎ができていないと言っているような気がして、口にしづらい。

「仕事ができない」と決めつけていた頃

だから抱えます。
一人で抱えます。
そして時間がかかります。
時間がかかるから、ミスも出やすくなる。
ミスが出ると、さらに自己嫌悪が増える。

今振り返ると、あの頃の一番のしんどさは、事務作業そのものじゃありませんでした。
「これが苦手な自分をどう扱えばいいか」が分からなかったことです。

少し落ち着いて考えられるようになってから、ようやく切り分けられるようになりました。
苦手なのは仕事全体ではなく、仕事の種類だった、ということです。

打ち合わせで話を聞く。
相手の意図を整理する。
要件を言葉にする。
そういうところは、そこまで苦じゃなかった。
むしろ、そっちのほうが頭は動いていた。

一方で、決まった手順を正確に繰り返す作業や、細かい数字をミスなく揃え続ける作業は、明らかに消耗していた。
得意不得意の軸が、そこで初めて見えてきた。

苦手を前提にしたら、仕事は回り始めた

でも新人の頃は、この切り分けができません。
全部まとめて「自分がダメ」という結論にしてしまう。
これはたぶん、多くの人が通る道です。

もうひとつ、今だから言えるのは、「向いてない」と言ってよかったんだな、ということです。
もちろん投げ出す意味ではありません。
放棄する意味でもありません。

事務作業が苦手だと分かったうえで、どう扱うかを考える。
それができるようになると、仕事はかなり楽になります。

僕の場合は、完璧に一人で仕上げようとするのをやめました。
確認が必要なところは、早めに人に見せる。
自分が詰まりやすい作業は、時間を多めに見積もる。
その代わり、整理や説明が必要な場面では前に出る。

急に得意になることはありませんでした。
今でも事務作業が好きかと言われると、正直そうでもない。
でも「苦手なままでも仕事はできる」という前提を持てたことで、消耗の仕方は大きく変わりました。

「言ってよかった」と思えた一言

印象に残っている出来事があります。
ある日、先輩に「事務作業、時間かかるタイプ?」と聞かれました。
少し迷ってから、「はい、ちょっと苦手です」と答えました。
すると先輩は、「そっか。じゃあ早めに共有してくれればいいよ」と言いました。

それだけでした。
説教もない。
評価の話もない。
ただ前提が共有された。

その瞬間に思ったのは、あ、これでよかったんだ、ということでした。
苦手をなくす必要はなかった。
隠す必要もなかった。
扱い方を変えればよかった。

新人の頃に知りたかったのは、事務作業を得意にする方法じゃありません。
苦手だと気づいたときに、自分をどう扱えばいいか、という視点でした。

事務作業が苦手だと気づくのは、社会人として割とよくある通過点です。
困ったことそのものよりも、その受け止め方のほうが、あとあと効いてきます。

もし今、「自分、事務作業向いてないかも」と思っている人がいたら、それは仕事ができないサインではありません。
仕事の輪郭が、少し見えてきただけです。

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投稿者

高橋 颯人
高橋 颯人
SEOコンサル出身。数値分析と戦略立案を得意とし、Webディレクター向けに“数字で語る進行管理”を提唱している。GA4やSearch Consoleを使った改善提案を得意とし、数字に苦手意識を持つディレクターにもわかりやすく解説する記事で人気。