Webディレクターって、だいたいこんな感じです。
「なんとなくこう思うんだよね」と言われると、笑顔のまま止まります。
止まってしまうというより、止めてしまうに近いかもしれません。
ケンカをしたいわけではありません。
場を荒らすつもりもないです。
でも、ふんわりした指示をそのまま受け取ると、あとで確実にどこかで事故ると知っているので、つい詰めてしまいます。
それって、いつの期間の話ですか。
母数はどれくらいですか。
前回と比較していますか。
その「多い」は何に対してですか。
理屈っぽいと言われることもあります。
でも僕にとっては、防御反応みたいなものです。
数字を扱う仕事をしていると、「なんとなく」はだいたいトラブルの予告編だからです。
今日はそんな話です。
データを業務で扱っている人が、なぜ“なんとなく”をそのままにできないのか。
そして、それを現場でどう扱っているのか。
読んで「あるある」と笑ってもらえたら嬉しいです。
ついでに、明日から使える一手も持って帰ってください。
「なんか最近、伸びてない気がする」
Webの現場でよくある一言です。
「最近、伸びてない気がするんですよね」
この“気がする”。
これが出た瞬間、僕の頭の中では自動的にチェックリストが起動します。
最近っていつから。
伸びてないって何が。
セッション。
ユーザー。
コンバージョン。
それとも滞在時間。
比較対象は前月。
前年同期。
それとも直近7日。
気持ちは分かります。
ダッシュボードを眺めていて、なんとなく右肩下がりに見えることはあります。
でも、グラフの印象は簡単に裏切ります。
たとえばGA4で確認するとき。
「レポート」から「集客」→「トラフィック獲得」を開きます。
右上の日付をクリックして、期間を「過去28日」に設定します。
そのままだと“感覚”で終わるので、必ず「比較」にチェックを入れます。
比較対象は「前の期間」ではなく「前年同期」にすることが多いです。
季節性があるサイトなら特にです。
スコアカードを使う場合は、Looker Studioで「挿入」→「スコアカード」を選びます。
日付範囲を「自動」にせず、「絶対日付」に固定します。
そして「比較期間」をONにして、「前年同期」を選択します。
スタイルで「比較ラベルを表示」にチェックを入れます。
差分がパーセントだけでなく実数も見えるようにしておくと、印象に引きずられにくくなります。
これをやるだけで、「なんか減ってる」は「前年同期比−3.2%、ただしCVRは+0.4pt」に変わります。
話の質が変わります。
“気がする”を否定したいわけではありません。
ただ、そのまま走るのは怖い。
だから僕は、いったん数字に変換します。
それだけです。
ちょっと面倒ですが、後で揉めるよりはずっと楽です。
「もうちょっと良くならない?」
これもよくある言葉です。
「このページ、もうちょっと良くならない?」
ふんわりしています。
でも、悪意はありません。
クライアントもチームも、ただ前向きに言っているだけです。
ただ、僕の中では警報が鳴ります。
“良い”って何ですか。
CVRを上げたいのか。
離脱率を下げたいのか。
スクロール率を伸ばしたいのか。
それともブランドの印象の話なのか。
ここを曖昧にしたまま改善に入ると、改善したのに評価されない、という事態が起きます。
怖いのはそこです。
だから僕は、やんわり詰めます。
「改善のゴールって、CVRですか。それとも直帰率ですか?」
「現状の数値、共有してもらってもいいですか?」
「どの期間を基準にしますか?」
空気を壊さないように、でも逃がさないように。
このバランスは毎回ちょっとした綱渡りです。
具体的には、GA4の「エンゲージメント」→「ページとスクリーン」で対象ページを絞ります。
右上の日付を絶対日付で指定します。
キーイベント数とイベント率を指標に追加します。
列のカスタマイズで「イベント率」をONにするのを忘れない。
ここを見ずに“良さそう”で判断すると、後で必ず揉めます。
Looker Studioなら、ページ別テーブルに「セッション」「キーイベント数」「キーイベント率」「平均エンゲージメント時間」を入れます。
フィルタで対象ページを指定します。
必要なら「ブレンドデータ」で広告流入だけに絞ります。
比較期間は前年同期。
前年比の計算フィールドも作っておくと便利です。
計算式は「(今期 – 前年同期) / 前年同期」です。
こうして初めて、「良い」の定義が揃います。
定義が揃うと、議論がケンカになりません。
感情ではなく、差分の話になります。
“なんとなく良くしたい”は悪くないです。
でも、定義しないと消耗します。
僕は消耗したくないだけです。
「それ、感覚ですよね?」
これは自分にも向けています。
データを扱う人は、他人の“なんとなく”を疑います。
でも、自分の“なんとなく”も同じくらい危ない。
グラフを見て「これは広告のせいだな」と思ったとき。
本当にそうか。
タグ抜けてないか。
流入元の定義は変わっていないか。
直前でキャンペーンが終わっていないか。
GA4では「集客」→「トラフィック獲得」で、デフォルトチャネルグループを確認します。
期間を前年同期にします。
さらに「セカンダリディメンション」で「キャンペーン」を追加します。
キャンペーン終了日とトラフィックの落ち方が一致しているかを見る。
一致していなければ、仮説は一度保留です。
Looker Studioなら、広告データとGA4データをブレンドします。
キーは日付とキャンペーン名です。
ここがズレていると、すべてが崩れます。
「結合の種類」は左外部結合にすることが多いです。
広告データがあってGAがない日は、そのまま可視化したいからです。
僕は数字を信じています。
でも、数字は嘘をつきませんが、設定は平気でミスります。
だから“なんとなく”と同じくらい、“設定ミス”を疑います。
理系っぽいと言われます。
でも実際は、ただ怖がりなだけです。
曖昧なまま進むのが怖い。
検証しないまま確信を持つのが怖い。
だから一回止めます。
止めて、確かめます。
面倒ですが、それで大体のトラブルは減ります。
“なんとなく”を言語化するテンプレ
ここまで読んで、「いや、毎回そんなに詰められないよ」と思った人もいるはずです。
分かります。
全部を深掘りしていたら仕事が終わりません。
なので、僕がよく使うテンプレを置いておきます。
コピペで使えます。
- 「その“最近”は、どの期間を指していますか?」
- 「比較対象は前月ですか、前年同期ですか?」
- 「ゴールはどの指標で判断しますか?」
- 「現状の数値を共有いただけますか?」
- 「改善後の目標値はありますか?」
この5つだけでも、かなり空気が変わります。
攻撃的にならずに、曖昧さを解体できます。
どうしてもふんわりしたまま進みそうなときは、先に数字を出してしまいます。
「前年同期比で−2.1%ですが、CVRは横ばいです。ここを優先しますか?」と提示します。
選択肢を出すと、議論は前に進みます。
“なんとなく”は敵ではありません。
ただ、放置するとコストがかかるだけです。
Webディレクターって、だいたいこんな感じです。
ふんわりした言葉を、そのまま飲み込めない。
詰めたいわけじゃない。
でも、詰めないと後で自分が苦しくなると知っている。
だから僕は、今日も比較期間をONにします。
絶対日付にします。
前年比を出します。
まあ、そういうものです。
これで少しだけ、現場は楽になります。

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