新人のうちは「UIをどう見るか」「構造をどう読むか」が中心の学びになります。
18回で扱ったような“基礎スキル”を揃える段階です。
しかし、1〜3年目のどこかで、誰もが必ず気づきます。
「知っているだけでは信頼につながらない」 という現実に。
UIの違和感を拾えるようになっても、
構造を読めるようになっても、
デザイナーやPM、クライアントからの信頼は、もう一歩先にあります。
それが 「意図を汲み取って返せるコメントができるか」 という基準です。
表面のUIではなく、
構造のズレだけでもなく、
“デザインが何を狙っているのか”を読み取り、
その意図を前提に対話できる若手は、一気に周囲から評価されます。
今回は、「基礎を揃えた若手」が
“信頼される側”へ進むための観察術 をまとめます。
目次
デザインの“意図”を汲み取るための観察術
1. UIの“正しさ”ではなく「狙いの方向」を読む
若手がつまずく典型例が、
「正しいUI」かどうかを基準に見てしまう」 ことです。
- もっと押しやすくあるべき
- もっと目立たせるべき
- もっと情報を整理すべき
この“べき論”は間違いではありません。
ただ、デザインは常に何かを優先し、何かを捨てて成り立っています。
だからこそ、先に読むべきは
「このデザインは何を達成しようとしているのか」という“狙いの方向”です。
たとえば…
・ボタンが小さい → 設計者は“情報の優先度”を重視した可能性
・情報が控えめ → “読み進める体験の邪魔をしない”意図かもしれない
・余白が広い → “判断の迷いを減らしたい”狙いがある
デザインは、常に 意図の結果 として存在します。
表面のUIだけではなく、
“その選択をした理由”まで読み込める若手は、レビューの質が段違いになります。
2. 「意図 → 受け取り → 提案」の順番でコメントする
信頼されるコメントは、
順番の整ったコメント です。
若手がやりがちな失敗は、
「提案 → 理由」の順番で話し始めること。
例:
「ボタンをもっと大きくしたほうがいいと思います」
「見づらいので、コントラストを上げたいです」
これでは“作業依頼”に聞こえてしまいます。
信頼される伝え方は、次の順番です。
- 意図の理解
「今回のデザインは、〜を優先されている印象があります。」 - 自分の受け取り
「その中で、初回ユーザーは迷う可能性がありそうだと感じました。」 - 提案
「もし意図を保ったまま改善するなら、〜という調整はどうでしょうか?」
この順番を踏むだけで、
“観察に基づいた提案”に変わり、
デザイナーからの信頼が一気に高まります。
3. 意図は「3つの焦点」で読み解く
デザインの意図は、だいたい次の3つのどれかに属します。
1. 誘導の意図(どこに進ませたいか)
2. 説明の意図(何を理解させたいか)
3. 判断の意図(どこで迷わせたくないか)
この“意図の焦点”をあらかじめ自分の中で分類しておくと、
レビュー時の観察がスムーズになります。
たとえば、
「この画面での一番の意図は“誘導”だな」と思えば、
余白や整列よりも、視線の流れやCTAの位置を優先的に見るようになります。
逆に、
「ここは“説明”が軸だから、情報の粒度を先に整理しよう」
といった読み方にも変わる。
意図の焦点を見つけられる若手は、
レビューの場で“話す場所”を見誤りません。
4. “批評”ではなく“意図の補強”としてコメントする
若手が信頼を落としやすいのは、
コメントが“批評”になってしまう瞬間です。
- 気になる
- やや弱い
- 目立たない
- 重い
これらは感じ方の表現であり、
“意図を補強する提案”ではありません。
信頼される若手は、
コメントを「意図の補強」として扱います。
例:
「今回の意図は“情報を段階的に伝えること”だと思うのですが、
この順番だと中盤で少し勢いが落ちるかもしれません。
意図に合わせて、二番目のブロックを上に上げるのはどうでしょうか?」
意図を軸にコメントすることで、
デザイナーとの会話は“大きな目的”の話へと移行し、
細部の指摘よりも建設的なレビューになります。
5. 意図を読む力は“観察メモ”で育つ
意図の読み取りは、
一度身につくとあらゆるデザインに応用できます。
そのための練習としておすすめなのが、
「意図の観察メモ」 です。
毎日触れたUIに対して、
次の2行だけをメモする習慣をつくります。
- 今日触れた画面の“意図”は何か
- その意図を支える要素は何か
これを続けると、
意図の“方向”を見る癖がつき、
レビュー時の視点が劇的に変わります。
意図を読めずに空回りしていた頃 僕を変えた一言
僕が2〜3年目の頃、
「コメントが浅い」と言われ続けていた時期がありました。
レビューの場で発言しても、
デザイナーが反応に困っているような、あの微妙な空気。
言葉は出ているのに、核心に触れられていない感覚。
理由は分かっていました。
UIの違和感を拾うことはできても、
デザインの“意図”を読めていなかったからです。
あるレビューの日、
僕は画面の違和感を一生懸命並べていました。
ボタンが弱い、テキストが目立ちすぎる、
情報の塊が大きい、など。
するとベテランのデザイナーが、
静かに画面を見つめながら、こう言いました。
「海斗、それは“表面のノイズ”だよ。
このデザインが何を狙っているかを見てから話そう。」
その言葉は、僕の中で大きく響きました。
それまで僕は、
“見えるもの”ばかり追っていた。
けれどデザイナーが見ているのは、
“どんな体験を作りたいか”という意図の方向だった。
その日から僕は、レビューの前に必ず
「このデザインは何を達成しようとしているのか?」
をメモに書くようにしました。
たとえば…
・初回ユーザーを迷わせないこと
・情報を段階的に見せること
・判断の負荷を軽くすること
・目的地を早く示すこと
たったこれだけで、コメントの質が変わりました。
「今回の意図は“迷いを減らす”ことだと思うのですが、
この部分の情報提示が少し早いので、
意図に対して負荷が大きいかもしれません。」
そんなふうに“意図を軸に言葉を置ける”ようになったのです。
するとデザイナーの反応も変わりました。
「その見方、いいですね」
「意図を残したまま調整するなら、こういう案もありますよ」
議論の質が一気に変わり、
デザイナーとの関係も深まりました。
あの時の僕に伝えたいことはただ一つ。
デザインを読む力は、意図を読む力。
意図を読む若手は、必ず信頼される。

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