新入社員になると、「最初が肝心だ」とか「最初に頑張らないと置いていかれる」とか、そういう言葉をたくさん聞くと思う。
真面目な人ほど、それを全部正面から受け止めてしまう。
だから、分からないことがあっても黙る。
仕事が遅れても、自分で抱え込む。
周りが忙しそうに見えて、声をかけられない。
でも、現場に長くいる立場から言うと、
最初から全部できることなんて、誰も期待していない。
むしろ、最初の段階で無理をして、
「何が分かっていないのか分からない状態」になるほうが、
あとでずっと苦しくなる。
この回では、
仕事を始める前に「これだけ知っておくと楽になる」
考え方の話をする。
何かを覚えろ、できるようになれ、という話じゃない。
つまずかないための準備の話だ。
仕事を始める前に 勘違いしやすいこと
新入社員が一番勘違いしやすいのは、
「できない=迷惑」という前提だと思う。
実際の現場では、
新入社員ができないこと自体は、ほとんど問題にならない。
問題になるのは、
できないまま、分からないまま、動けなくなることだ。
最初の数か月で求められているのは、
成果でも、スピードでも、完璧さでもない。
・今、何が分からないか
・どこで止まっているか
・自分がどの段階にいるか
これが、周りから見える状態であること。
「それ、最初は求められてないよ」と言いたくなる場面は多い。
判断力も、全体把握も、先回りも、
最初からできる人はいない。
できなくて当然な時期がある、という前提を、
まず自分に許していい。
最初に 整えておくと楽になる視点
最初に整えておくと楽になるのは、知識ではない。
考え方と立ち位置だ。
たとえば、
「早く一人前になろう」と思うより、
「今は教わる側だ」と自覚しているほうが、圧倒的に楽だ。
教わる側にいる間は、
分からないことを分からないと言っていい。
確認に時間がかかってもいい。
立ち止まってもいい。
逆に、
「もう分かってる顔」をし始めた瞬間から、
ミスは表に出にくくなり、修正が遅れる。
最初の半年は、
自分の評価を上げる期間じゃない。
現場の動き方を理解する期間だ。
この視点を持っているだけで、
無駄な焦りはかなり減る。
現場に入ってから 困らないために
現場で一番困るのは、
「どうしていいか分からないのに、動かなきゃいけないとき」だ。
そんなときの判断軸は、実はシンプルでいい。
・これは今すぐ聞くべきか
・少し待って整理してから聞くべきか
・自分だけで進めていいか
迷ったら、
一人で判断しない。
「ここまでやって、ここで止まっています」
「この認識で合っていますか?」
こうした声のかけ方ができるだけで、
現場での立ち回りは安定する。
助けを求めるタイミングが早い人ほど、
実は信頼されやすい。
それは、
トラブルを小さいうちに共有できるからだ。
新入社員のうちは これで十分
新入社員のうちは、
全部できなくていい。
全部分からなくていい。
・分からないことを分からないと言える
・止まったら止まったと言える
・一人で抱え込まない
まずは、これで十分だ。
仕事は、長く続く。
最初に無理をしすぎると、
途中で息切れする。
だから最初は、
頑張りすぎないことを頑張ってほしい。
少しずつ慣れる。
少しずつ見える範囲が広がる。
それでいい。
仕事を始める前に、
この前提を持っているだけで、
きっと最初の半年は、ずっと楽になる。
コラム|教える側になって分かったこと
教える側に回るようになってから、
新入社員を見ていて、何度も思い出す場面がある。
それは、自分が新人だった頃のことだ。
早く役に立ちたくて、
迷惑をかけたくなくて、
分からないことを抱えたまま、必死に踏ん張っていた。
当時の自分は、
「最初に頑張れるかどうかで評価が決まる」
そんなふうに思い込んでいた。
だから、聞けば済むことも聞かない。
確認すれば防げたミスも、そのまま進める。
結果、後で大きな手戻りを出して、
余計に時間を使っていた。
今振り返ると、
あれは根性でも努力でもなく、
ただの視野の狭さだったと思う。
教える側になって初めて分かったのは、
新人が「最初に頑張りすぎている状態」ほど、
実は現場にとって怖いものはない、ということだ。
無理をしている人ほど、
一見すると順調に見える。
手を動かしているし、遅れも表に出ない。
でも、その裏で判断が自己完結になり、
ズレが積み上がっていく。
あるとき、
明らかに抱え込みすぎている新入社員がいた。
忙しそうだし、真面目だし、
「もう少し様子を見よう」と思ってしまった。
結果、その判断は遅かった。
本人は限界まで我慢していて、
ある日まとめて崩れた。
そのとき強く思った。
最初に頑張りすぎる人ほど、止める役割が必要だと。
「最初はこれでいい」
「今は分からなくて大丈夫」
「それはまだ背負わなくていい」
こういう言葉は、
言わなくても伝わるものじゃない。
ちゃんと口にしないと、伝わらない。
新入社員にとっては、
「頑張らなくていい」と言われること自体が、
一つの許可になる。
教える側がそれを言えるかどうかで、
現場の持ち方は大きく変わる。
だから今は、
新入社員が無理をしていそうなときほど、
早めに声をかけるようにしている。
できていないことを指摘するより、
「今、どこが一番しんどい?」と聞く。
進捗を詰めるより、
「ここまでの認識を一回そろえよう」と言う。
最初に全部頑張らせないことは、
甘やかすことじゃない。
長く働ける形を作ることだ。
これは、新入社員本人にも、
教える側にも、
どちらにも言えることだと思っている。
最初は、これで十分。
そう言える現場のほうが、
結果的に強い。

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