最近つくづく思います。
スケジュールは引ける。
タスクは整理できる。
関係者の役割も明確にできる。
なのに、日本語になると急に足元がぐらつく。
とくにあれです。
「させていただく」。
丁寧にしたい。
失礼があってはいけない。
でも長い。
でも削るのが怖い。
若手のころ、私は打ち合わせ後の議事録で「いただく」を連発していました。
そのあと先輩に、さらっと言われたんです。
「そんなに“いただか”なくてもいいんだよ。」
あの一言で、私は初めて、自分が“過剰ないただく”状態だったことに気づきました。
今日は、その話をします。
笑いながら読めて、でも明日からちょっと楽になる話です。
あるある。気づけば“いただき屋さん”
若手のころの私のメールは、こんな感じでした。
「ご確認いただけますと幸いです。」
「ご共有いただきありがとうございます。」
「修正させていただきました。」
「ご提案させていただきます。」
「ご確認させていただけますでしょうか。」
もう、いただき放題です。
しかもMTGの場でもやっていました。
「こちらで一度整理させていただいて、改めて共有させていただければと思います。」
自分で言っていても、どこで息継ぎをすればいいのかわからない。
でも、削るのが怖い。
ラフに聞こえないか。
生意気に思われないか。
Webディレクターって、基本的に板挟みのポジションです。
クライアントにも制作側にも配慮します。
だから日本語も、無意識に“安全寄り”になります。
その結果、「いただく」を盛る。
丁寧にしすぎて、文章が重たくなる。
でもそれがマナーだと思っている。
ある日、打ち合わせ後のフィードバックで先輩に言われました。
「丁寧なのはいい。でもね、それ、全部“させていただく”じゃなくても通じるよ。」
衝撃でした。
何がそんなに引っかかるのか
なぜ「させていただく」は増殖するのか。
理由は単純です。
責任を軽く見せたいからです。
「修正しました。」
と言うよりも。
「修正させていただきました。」
と言ったほうが、角が立たない気がする。
「提案します。」
よりも。
「提案させていただきます。」
のほうが、謙虚に聞こえる気がする。
私たちは、“やります”と断言するのが少し怖い。
だからクッションを置く。
でも、クッションを置きすぎると、何を言っているのかぼやけます。
「ご確認させていただけますでしょうか。」
これ、よく見る表現ですが、少し立ち止まってみましょう。
“確認する”のは誰でしょうか。
相手ですよね。
でも“させていただく”は、自分の行為に使う言葉です。
つまりこの文章は、
「私が確認することを許可してもらえますか?」
のような構造になっています。
本当に言いたいのは、
「確認してください。」
のはずです。
敬語を重ねすぎると、主語と動作の向きがねじれます。
これが、なんとなく引っかかる正体です。
Webディレクターは、構造を整理する仕事です。
なのに自分の文章は構造が冗長になる。
これ、完全に日本語迷子です。
学問上の整理を、ざっくり
少しだけ文法の話をします。
「させていただく」は、本来、
・自分の行為について
・相手の許可や恩恵を受けているとき
に使う表現です。
たとえば。
「本日は登壇させていただきます。」
は、その場を用意してもらったことへの配慮が含まれます。
でも。
「資料を送付させていただきます。」
はどうでしょう。
相手の許可を得て送るわけではない。
業務として当然の行為です。
この場合は、
「資料を送付します。」
で十分です。
学問上は、「させていただく」は乱用されがちだと言われています。
とはいえ、ビジネスの現場では完全に排除されているわけではありません。
つまり。
正解はひとつではない。
だからこそ迷子になります。
実務ではどう扱われているか
正直に言います。
今のビジネスシーンでは、「させていただく」は広く使われています。
多少の乱用でも、致命的なミスにはなりません。
でも、違いはあります。
読みやすさです。
「修正しました。」
は1秒で意味が入ります。
「修正させていただきました。」
は、ほんの少しだけ重い。
メールが長くなるほど、この差が積み重なります。
特にWebディレクターは、議事録や報告メールを書く機会が多い。
文章量が多い分、冗長さがそのまま負荷になります。
私は今、こう考えています。
・相手に許可をもらって行う特別な行為 → 使う
・業務として当然の行為 → 使わない
そしてもうひとつ。
チーム内では、基本的に使わない。
制作メンバーに「確認させていただきます」と言うよりも、
「確認します」でいい。
そのほうが、流れが軽くなる。
丁寧さは、言葉の長さではない。
配慮の方向性です。
今日からどうする?
削るのが怖い。
わかります。
なので、いきなり全部やめなくていいです。
まずは置き換えリストを持ちましょう。
コピペでどうぞ。
「修正させていただきました。」
→「修正しました。」「ご提案させていただきます。」
→「ご提案します。」「ご確認させていただけますでしょうか。」
→「ご確認ください。」「共有させていただきます。」
→「共有します。」
それでも不安なら、ひとつだけクッションを足します。
「恐れ入りますが、ご確認ください。」
これで十分丁寧です。
もうひとつ。
MTGで長くなりがちな人向けの一文。
「一度こちらで整理します。」
これで足ります。
“させていただく”を抜いた瞬間、少しだけ自分が強く感じるかもしれません。
でもそれは、生意気ではなく、明確です。
Webディレクターは、日本語で迷子になりがちです。
でも、構造を整えるのが仕事なら、自分の文章も整えられる。
私の記事が目指すのは、言葉の正しさを競うことではありません。
現場が少し楽になること。
「いただきすぎていたな」と笑えたら、それで十分です。
丁寧さは、削ってもなくなりません。
むしろ、削ったほうが伝わることもあります。
明日のメールで、ひとつだけ。
“いただかない”選択をしてみませんか。
きっと、思ったより何も起きません。
それどころか、少しだけ読みやすくなります。
Webディレクターって、だいたいこんな感じ。
日本語で迷いながら、それでも前に進んでいます。

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